女性の本当の強さが見えてくる。「アナザーエナジー展」(開催期間延長:2022年1月16日まで)
71歳から105歳まで、16人の女性アーティストは全員現役。世界14か国出身の彼女たちは世界をどう見てきたのか?
Written by MACHIDA Akemi
ジェンダー問題がメディアで取り上げられることが多くなり、世の中が変わってきていると感じます。男女間の格差をはかる指数「ジェンダー・ギャップ指数2021」では、日本は世界156か国中、120位と主要7か国では最下位でした。どうしてこんなに低いの? とがっかりした人も多いでしょう。これは特に国会議員の女性の割合が低いこと、企業で管理職に就く女性が少ないことが要因となっています。
女性の社会進出において課題が多い中、「アナザーエナジー展:挑戦しつづける力―世界の女性アーティスト16人」が2021年4月22日(木)~2022年1月16日(日)(開催期間が延長されました)。
戦後動乱期の1950年代~70年代に活動を始め、今日まで継続してきた女性アーティスト16人の活動にスポットを当てた展覧会です。年齢は71歳~105歳まで、全員が50年以上のキャリアを誇ります。16人のアーティストの出身地や活動拠点、表現方法、さらに生き方はそれぞれに多様ですが、彼女たちの人生を通してフェミニズムや移民の歴史など、世界の問題や数々の事象が見えてきます。
《美しいブルー》(2017年5月13日)はスイス・バーゼル生まれ、ブレガリア在住のミリアム・カーンの作品。鮮やかな水色の画面にぼんやりと浮かび上がっているのは、大海に沈んでいく難民の姿です。
カリフォルニア州ワスコ生まれ、ロサンゼルス在住のスザンヌ・レイシーはジェンダーや人種差別、老化、暴力などの社会問題と向き合い、パフォーマンスや映像、写真など活動は多岐にわたります。数百人が参加する大規模プロジェクトも手掛けていて、内容だけでなく視覚的な美しさも重要視しているといいます。
日本からは、三島喜美代と宮本和子が出展。高度成長期を迎えようとしていた頃、三島喜美代がコラージュの素材に使ったのは、海外の雑誌や新聞、チラシなど。三島は「どんな情報も読み終わった途端にゴミになる」と考え「膨大な情報に対する不安感や恐怖感」を覚えたといいます。陶器で作られた膨大な新聞や雑誌を積みあげた作品は、海外からも多くの人々の関心を集めています。
本展では絵画、映像、彫刻、大規模インスタレーションにパフォーマンスなどの多彩で力強い作品、約130点が展示されます。時代が激しく変化しアート・マーケットの評価や流行が変わろうと、それにとらわれることなく、独自の創作活動を続けてきた16人のアーティスト。彼女たちを突き動かす特別な力「アナザーエナジー」とは何なのでしょう?
新型コロナウイルスの拡大で先が見えない不安な今、やりたいことをただひたすら続けてきたという女性アーティストの姿は、勇気を与えてくれます。将来、社会に出て未来を切り開いていく学生にも観てもらいたい展覧会です。
*以下の作品は、9月28日(火)を持って展示が終了となっています。
■ カルメン・ヘレラ 《ビクトリア》 2017年
■ ベアトリス・ゴンザレス 《ブカラマンガの運び人》 2006年
展示作品の一部
「アナザーエナジー展:挑戦しつづける力―世界の女性アーティスト16人」
会期:2021年4月22日(木)~2022年1月16日(日)※ 2021年4月25日(日)~5月11日(火)までは、緊急事態宣言発令のため臨時休館
開館時間、入場料などの詳細は、美術館のウェブサイトをご覧ください。
森美術館(六本木ヒルズ森タワー53階)
東京都港区六本木6-10-1
TEL 050-5541-8600(ハローダイヤル)
TOP画像:フィリダ・バーロウ 《無題:キャンバスラック; 2018-2019》 2018-2019年 Courtesy: Cross Steele Collection 展示風景:「袋小路」ロイヤル・アカデミー・オブ・アーツ(ロンドン)2019年 撮影:Damian Griffiths ※参考図版