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『オークションの世界 VOL.3 』オークションは心理戦。初心者は出品者も買い手もリザーブ価格が狙い目だ。

Written by HARADA Nobuyuki

リザーブ価格の値付けで、予想を超えて会場が熱くなることがある。いつもは冷静なプロも興奮して我を失って追いかけてしまうことも。

 


今回はオークションの心理戦について言及しよう。オークション会社で一番重要な仕事は集荷に尽きる。もちろん買い手を集めることも大切だが、魅力的な物がなければ勝負にならない。また魅力的な物も納得できる価格で落札できなければ意味がない。

オークション会社は落札率を高めるために、出品者にできるだけ低いリザーブ価格(最低落札価格)での出品を提案してくる。反対に出品者側は安く落札されるリスクを避けるためにできるだけ高いリザーブ価格にしたい。経験から言えば売却することを優先するならば、オークション会社のアドバイスに従うことをお勧めする。彼らは相場をよく知っているので、いくらかのリザーブ価格なら買い手の手が挙がるかを高い確率で分かっている。それに対して、出品者の意向をある程度汲んだリザーブ価格で始めた場合、不落札になるか、リザーブ価格ギリギリで落札されて競り上がる確率が低くなることもある。

オークション会社は出品者から価格を全面的に任された時、相場を無視して極端に低いリザーブ価格を設定することがある。たいていの場合は花の蜜に集まる蜂のように安値を求めて買い手が多く集まるので会場は熱くなり、通常のリザーブ価格を大きく超えた価格で落札されることも多い。いつもは冷静なプロも興奮して我を失って追いかけてしまう場面に何度も遭遇した。もちろん想定外に安く落札されることもないことはないが、その多くは元々の魅了に乏しいものがほとんどだ。

無処理の宝石はオークションで極めて人気が高い。上 /モゴック産無処理サファイア。5ct 下/モゴック産無処理ルビー。3ct(諏訪貿易)

「リザーブ価格」を狙うのも成功
オークションのカタログにはEstimate Price(見積価格)が下限と上限の幅で表示されている。一般的にはEstimate Priceの下限がリザーブ価格のことが多い。買い手としてはリザーブ価格の極端に低い物は結果として高くなるので、敢えてリザーブ価格で落札できる物を狙うのも一考だ。他に競る人がいなくてリザーブ価格で落札できれば結果として成功ということになる。

覚えておきたいのは、オークションの相場は全体として十分にリーズナブルなので相場より極端に安い価格で落札できることは少ないと割り切ることが大切だ。状況によってはオークション会社が自らの手数料を削ってリザーブ価格以下でハンマーを打つことがある。リザーブ価格で買うという割り切りをすれば、このような幸運も飛び込んでくる。


原田信之(Harada Nobuyuki)
株式会社ジュエリーアドバイザーアンドギャラリー 取締役社長
30年間で百数十回に及ぶ宝石の海外買い付けとジュエリーのプロデューサーの経験を生かして、相続、オークションの査定や資産性のアドバイスを行っている。


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