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5月の誕生石エメラルド。その歴史は16世紀半ば、コロンビアから始まった。

古代ギリシャ語で「緑色の宝石」と名付けられた宝石。自然志向の波に乗って、その魅力が再認識されている。


エメラルドのジュエリーといえば、よく知られるエメラルドカットのエレガントでクラシックなデザインが中心で、ファッションとして身につけるよりも、特別なシーンにつける宝石と捉える人が多かったようです。

そうしたクラシックなデザインも含め、エメラルドはこの数年、世界中で大人気の宝石です。カルティエ、ティファニー、ブルガリ、ヴァン クリーフ&アーペルなど、人気のハイジュエリーメゾンも、エメラルドを用いて、新しいデザインのコレクションを発表し、モードに合わせられるものが増えています。なぜ、エメラルドが注目されているのでしょうか。これまでエメラルドといえばコロンビア産の高価なものを指していましたが、近年ザンビア産の小粒のエメラルドが出回るようなり、デザインが工夫できるようになっています。また、自然をイメージさせる“グリーンカラー”が時代にマッチしています。ちなみに、エメラルドの語源は、古代ギリシャ語やラテン語で「緑の宝石」を意味するスマラグドゥス(smaragdus)に由来します。

エメラルドのトップクラスの大半は、コロンビアで採れます。コロンビア産のエメラルドは、ある意味ブランドといっていいでしょう。「コロンビア」と聞くだけで、思わず目が留まる人が多いのも確かです。

コロンビアのエメラルドが知られるようになったのは16世紀半ばです。大航海時代、スペイン人は南アメリカ大陸に到達し、その天然資源の探索に注力しました。コロンビア原住民を征服し、エメラルド鉱山の在り処を発見しました。現在でも、コロンビア産は世界のエメラルド産出量の50%を占めています。

しかし、コロンビアよりも古くからエメラルドを産出し、実際に身につけていた国があります。古代エジプトです。小プリニウスと呼ばれた古代ローマの博物学者が、西暦79年頃、エメラルドが古代エジプトに拠点を置いたプトレマイオス王朝で使われていたことを書き記しています。プトレイマイオ王朝が終末を迎える少し前のファラオ、クレオパトラ7世は、絶世の美女と言い伝えられていますが、後年彼女の描写した絵画や映画から、彼女がエメラルドらしき宝石類を含むジュエリーを大量に身につけていたことが想像できます。

エジプトのエメラルド鉱山は長らく不明でした。19世紀、確認された時には、掘り尽くされていました。古代ローマ人が、宝の山を見過ごしておく訳はないでしょう、エメラルドが古代エジプトからローマに運び込まれたことを、遺跡が証明しています。

そして、16世紀、スペイン人によって発見されたコロンビアのエメラルドはヨーロッパ、トルコ、イラン、インドの王室に納められ、スペインに富をもたらしました。昨年、国立新美術館で開催された「トルコ至宝展」をご覧になった方は、記憶にあると思いますが、エメラルドを配した数多くの宝飾品や工芸品が展示されていました。トプカプ宮殿博物館が所蔵するオスマン帝国時代の宝物でしたが、エメラルドの多くはコロンビアから運び込まれたものでしょう。

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