7月の誕生石、中世の貴族に愛された真っ赤な宝石
Written by MACHIDA Akemi
中世ヨーロッパで権力と富の象徴とされたルビー。かつてはダイヤモンドより価値があった。
吸い込まれるような深い赤の宝石ルビーは、別名「宝石の女王」とも呼ばれ、高品質なものは高値で流通しています。
鮮やかな赤が目をひくルビーは、布に包んでもその赤い輝きは隠せないなどと言われ、古代インドより大切にされてきた石です。今でこそダイヤモンドが人気ですが、中世ヨーロッパのルネサンス時代には、ルビー、真珠、エメラルド、サファイアなどの華やかな宝石がもてはやされました。といっても、貴族などの特権階級の人だけが持つことができる特別なものでした。特にルビーは、情熱、権力の象徴として大事にされ、ダイヤモンドよりも価値が高かったのです。
ルビーの名前の由来は、ラテン語の赤を意味する「rubeus」(ルベウス)からきています。中世の肖像画に、ルビーの装飾品を身に着けたものをよく見かけますが、当時の貴族は赤い宝石、ルビーを好んだというのが絵画からも知ることができます。イギリス王室の王冠の大きな赤い宝石は、実はルビーではなくスピネルだったというのは有名な話。このように、鑑定してみたらじつはルビーではなかったというケースは多いようです。当時ルビーを使いたかったけれど、多くは産出されなかったため、やむを得ず他の石で代用したということなのかもしれません。
地中の奥深くから生み出される宝石。ルビーの鉱物名はサファイアと同じコランダムです。このコランダムに1%ほどのクロムが入ることで美しいルビーになるのですが、クロムが少ないと薄いピンクサファイアになってしまいます。美しいルビーは、自然界の偶然が生み出すもので大変希少というわけです。
ルビーの人気の1つに、需要があるのになかなか採れないということがあります。ルビーの産地はミャンマー、スリランカ、タイ、モザンビークなどに限られています。最も価値が高いのが、ミャンマーのモゴックで採れるピジョンブラッドです。「鳩の血」という意味で、やや濃い赤で透明度が高く、強いテリを発するルビーで高い価格で取引されています。市場に出回っているルビーはほとんどが色の調整のため加熱処理が行われていますが、ルビーが好きな人は、非常にレアなミャンマー産のピジョンブラッドの天然無処理の美しいルビーにこだわって探しているという人もいるようです。
硬さを示すモース硬度では、最も硬いダイヤモンドの10に次いで、ルビーは硬度9なので耐久性も高いと言えます。硬さゆえにブリリアントカット、スクエアカット、ペアシェイプカットなど、さまざまなカットを施すことが可能です。
ルビーの赤には、石ごとにさまざまな色味があることも魅力です。深みのある赤からピンクっぽい赤、少しオレンジがかった赤などもあり、自分の好きな赤を選ぶ楽しみもあります。ファッションのワンポイントにもなる赤は、身に着けるだけで元気が湧いてくるので、心理的にもいい影響があります。赤いルビーは女性の肌を美しく見せてくれます。積極的に取り入れたいジュエリーです。
*ジュエリーは『Brand Jewelry 2019 SUMMER-AUTUMN』に掲載商品。
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