ビジューファンタジー。それはジュエリー以上にモードとリンクしたフランスらしい、存在のあるアクセサリー
Written by Brand Jewelry
素材価値では判断できないのがビジューファンタジー。英語ではコスチュームジュエリーと言うが、実はフランスが原点
オーギュスティーヌ パリ(Augustine Paris)、フランスで注目を集めているビジュー ファンタジー(コスチュームジュエリー)
オーギュスティーヌ パリのデザイナーであるティエリー・グリポア(Tierry Gripoix)は、伝統的なガラス工房の4代目。この工房はガラス工芸の一種であるパート・ド・ヴェールの技術を用いたビジュー ファンタジーを製作する工房として、彼の曾祖母であるオーギュスティーヌ・グリポアによって創業されました。その優れた技術、色彩感覚、デザインセンスは、シャネル、イヴ・サンローラン、バレンシアガ、ディオール、バルマン、ラクロワ、ルイ・ヴィトン、ニナ リッチといったそうそうたるオートクチュールメゾンに信頼され、彼らのコレクションのためにビジュー ファンタジーを製作しました。そうした作品は、今日ではヴィンテージとしてコレクターズアイテムとして人気です。
日本ではコスチュームジュエリーという言葉が使われていますが、それはアメリカで1930年代頃より人気を博したコスチュームジュエリー・デザイナー、ミリアム・ハスケルのヴィンテージが近年、注目されているということが挙げられます。1930年代、ナチスの台頭などにより不穏な社会情勢を察知したヨーロッパの多くの人々はアメリカに渡り、その中には様々な職人が含まれていました。アメリカではその頃ちょうどハリウッド映画がもてはやされ、スクリーンに映える迫力のあるデザイン、大きくて鮮やかなラインストーンなどが女性たちの目を引きました。ハリウッドの女優から広まったので、コスチュームジュエリーという呼び名が付いたのでしょう。
グリポアはアメリカに渡らず、フランスの伝統の継承を重んじました。グリポア家の秘伝の手仕事や芸術的なセットジュエリーを引き継いだティエリーは、1982年ジル・サンダーの初のコレクションを皮切りに、クリスチャン・ディオールのヘッドデザイナーとしても知られるイザベル・カノヴァスと8年にわたり年2回のコレクションをプロデュースしました。最近ではルイ・ヴィトンの限定シリーズも手掛けています。 彼の強い個性あふれる作品は、先代から伝わる伝統技術とともに、新しいアイデアを取り入れています。
Tガラス呼ばれる人工の原材料を使った美しい色とパターンの組み合わせは彼のオリジナルです。こうした卓越した技術力により、 オーギュスティーヌ パリはフランス政府が制定した産業上の特別なノウハウを有する「無形文化財企業」の認定マークを受けています。
この記事はBrand Jewelry 2016Winter-2017Spring掲載の記事を再編したものです。