ジュエリーに興味のある人、必読書。宝飾史研究家・山口 遼氏の著書『ブランド・ジュエリー 30の物語 改訂版』売れて重版
Written by WATANABE Ikuko
ジュエリーファンに読者層を絞ったテーマで重版を繰り返すスゴイ本。ジュエリーへの真摯な愛が伝わる1冊。これまで読んでいない人は、ぜひこの機会に。
ジュエリーを正しく評価できる国内唯一の宝飾史研究家・山口 遼氏の著書。巻末「独断的ブランド選評」には、ジュエリーへの愛が詰まっている。
書籍『ブランド・ジュエリー 30の物語 −天才作家たちの軌跡と名品–』(東京美術)は2008年に初版が発行され、2018年改訂版が編集され、この10月、重版された。読者は主にジュエリーが好きな人、ジュエリーの仕事に携わる人に限定されているだろうが、売れ行きが上々だ。初版から12年経つが本の内容が古くならないのは、確固たる信念を持って作品を作り続けているブランド、あるいはすでに店は閉じてしまっているが、今ではアンティークとして高値で取引される作家だけを取り上げているからだ。どんなに注目されていても、花火のように消えてしまいそうなところは1つも入っていない。
初版と改訂版との違いは、改訂版ではジュエリー 図版を16ページのカラーで追加した。様式別に図版を載せ、ジュエリーの初心者でもわかるように解説している。ジャポニスム、考古学様式、ガーランドスタイル、アール・ヌーヴォー、アール・デコ、そして特徴的な技法の説明に続く。さらっと目次を追ってみよう。「老舗の宝石商」の項目では17〜19世紀に創業し、伝統を継承している21ブランド、「近代の名店」では5ブランド、「近年の作家」では4ブランドを取り上げている。ルイ13世頃から王室にジュエリーを提供してきたメレリオ・ディ・メレー(現在の名はメレリオ)、シャネルのジュエリーを制作したヴェルドゥーラ、ジュエリーマニアなら一度は現物を見たいと思うJARやコンテンポラリー作家ケヴィン・コーツ、日本の近年のジュエリー代表するギメル……海外のジュエリー専門書では見ない山口氏独特の選別がまた面白い。そして「ジュエリーの目利きになる」では、ブランド名にとらわれず、本質を見抜くポイントを解説。ジュエリーの技法はちょっと頭に入れておくと、ジュエリーを買う時に役立つだろう。図版も多く、読んで、見て、楽しめる本である。
『ブランド・ジュエリー 30の物語 −天才作家たちの軌跡と名品−』
166ページ 単行本 東京美術 ¥2,200(税込)
著者紹介:山口 遼(やまぐち りょう)宝飾史研究家。宝石に関するマーケティング、商品開発、デザイン開発の専門家。1938年北海道生まれ。61年、同志社大学英文科卒業、株式会社ミキモトに入社。94年ミキモト役員を退任し、ジェム インターナショナル社長、リオ インターナショナル社長を経て、2019年同社を解散。業務の傍、宝飾品の研究、山脇美術専門学校、山梨県立宝石美術専門学校、日本宝飾クラフト学院などにて講師を務める。主な著書:『ジュエリイの世界史』(新潮文庫)、『宝飾品市場』(日本経済新聞社)、『世界の宝石博物館』(徳間書店)、『アンティーク・ジュエリー入門』(婦人画報社)、『アンティーク・ジュエリー 世界の逸品』(婦人画報社)、『ダイヤモンドの謎』(講談社アルファ新書)、『ダイヤモンド・ジュエリー入門』(東京美術)、『すぐわかるヨーロッパの宝飾芸術』(東京美術)など、著書・訳書・寄稿多数。