11月の誕生石は、レモンのような輝きを見せるシトリン。トパーズと似ていることから混同されることが多い
Written by MACHIDA Akemi
密かなブーム。明るいパステルイエローから、オレンジ系、茶色がかったものなど、色の濃淡の幅が広く、最近ではハイジュエラーでもシトリンをメインにしたジュエリーを多数発表している。
天然のシトリンはまれ。市場に出回っているシトリンのほとんどがアメシストを約450度で加熱処理したもの。
11月の誕生石は、トパーズの他にもう1つ、シトリンがあります。トパーズとシトリン、どちらも代表的なカラーは黄色味を帯びたカラーで似ていることから混同されることが多く、パッと見では区別するのは難しいでしょう。トパーズとシトリンは全くの別物で、それぞれに魅力があります。
シトリンはクオーツの一種で、和名は黄水晶です。歴史的に見ても古く、何千年も昔から装飾品に使われてきました。イギリス帝国の絶頂期であったヴィクトリア朝時代には、例えばシトリンを中央にセットし、周りをパールやダイヤモンドで囲んだブローチなどが作られていました。最近ではハイジュエラーでもシトリンをメインにしたジュエリーを数多く発表しています。英国王室のキャサリン妃は、サファイアの指輪のほかに、大ぶりのシトリンの指輪を時々公務で身につけることもあるようです。
シトリンの語源は、フランス語でレモンを表すシトロン(Citron)からきています。1883年にブラジルで、全くの偶然から、アメシストを加熱すると鮮やかな黄色に変化することがわかりました。天然のシトリンはなかなか採掘されないため、市場に出回っているシトリンのほとんどがアメシストを約450度で加熱処理したものです。人工的に手を加えたものは価値が下がるのではと思う方もいるかもしれませんが、そんなことはありません。加熱によって天然の石がもともと持つ潜在性を引き出しただけなので、加熱処理したシトリンも天然のシトリンも鉱物的には同じなのです。
魅力はその明るいパステルイエローから、オレンジ系、茶色がかったものなど色の濃淡の幅が広いところ。シトリンの黄色やオレンジ色は、クオーツに含まれているごく少量の鉄によるものです。濃いオレンジに変化したものは、ポルトガルのマデイラワインに似ていることから、マデイラシトリンと呼ばれています。はちみつの色にも似たこっくりとしたカラーは、シトリンの中でも高級感のある色味として昔から人気があります。最近では若い世代には、もっと明るいレモン色に人気があるようです。
シトリンの主要な産地はブラジル、ザンビア、ボリビアなどです。アメシストとシトリンが1つの結晶の中にあるものをアメトリンといいますが、ボリビア南東部のアナヒ鉱山で産出されます。天然のアメトリンはこのボリビア産のみと言われていて、市場に流通するアメトリンのほとんどは、加熱処理によりバイカラーになったものです。
太陽のような輝きを放つシトリンは、はつらつとしたハッピーなエネルギーをもたらしてくれます。自信や希望を与えてくれる宝石とも言われているので、将来に不安を感じた時やネガティブな思考に陥った時に身につければ、持ち主の気持ちを明るくしてくれるでしょう。
*トップ画像:Boucheron Brand Jewelry2017Summer-Autumnより。
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