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3月の誕生石は、モルディブのリゾートの海の色を思わせるアクアマリン

Written by MACHIDA Akemi

じつはエメラルドと同じベリルの仲間で、微量の鉄分の入り方でアクアマリン特有の透き通った水色になる。


古代ヨーロッパの船乗りたちが、嵐から身を守るお守りとして身につけたり、「恋をした人魚が流した涙がアクアマリンとなった」というロマンティックな伝説も知られている。

3月の誕生石、アクアマリンは透き通ったブルーが魅力的で、自分の誕生石ではなくても欲しくなる宝石です。モルディブのリゾートの海の色のようなカラーは、ずっと見ていても飽きません。名前の由来は、ラテン語の水を意味するAqua(アクア)と、海を意味するMarine(マリーン)からきています。アクアマリンは古代ヨーロッパの船乗りたちが、嵐から身を守ったり豊漁を願ったりするためのお守りとして身につけられていました。「海の精の宝物が浜辺に打ち上げられてアクアマリンになった」、「恋をした人魚が流した涙がアクアマリンとなった」というロマンティックな伝説も知られています。

清楚で品格があるからでしょうか、アクアマリンは昔から多くの王族貴族に愛されてきました。ロマノフ王朝の絶頂期を築いたロシアの女帝、エカチェリーナ2世は無類の宝石好きとして知られ、アクアマリンを愛してやまなかったと言われています。ウラル地方で宝石の採掘を積極的に勧めたエカチェリーナ2世は、ダイヤモンドをはじめアメシストも気に入って身につけていましたが、アクアマリンもお気に入りの1つだったとされているようです。

ティファニー TIFFANY & Co./ Brand Jewelry 2016Summer-Autumnより。

優しいブルーの発色のアクアマリンですが、じつはエメラルドの仲間であることはご存知でしょうか。両方ともベリル(緑柱石)の仲間で、緑色になるか、青色になるかは含まれる物質の違いによるものなのです。ベリルにほんの少しの鉄分が入ることで、瑞々しいアクアマリンの水色が生まれ、鉄分の入り方によって、淡いブルーから濃い青、緑がかった青までさまざまなカラーがあります。市場で見られるアクアマリンのほとんどは色を美しくするため、加熱処理が施されています。地中の熱によって変色されなかったものを人工的に熱を加えて美しいブルーにする処置なので、加熱処理により価値が下がるわけではありません。

同じベリルグループのエメラルドはインクルージョンが多く見られますが、アクアマリンは比較的きれいで大きな結晶も見つかります。モース硬度は7.5~8で、耐久性にも優れているので婚約指輪に選ぶ人もいます。硬度も十分あって水のように澄んだアクアマリンはどんな形にもカットができ、ラウンドやオーバルシェイプのブリリアントカットや、ボリューム感のあるエメラルドカットもよく見られます。白濁感のあるミルキーアクアマリンも人気で、こちらは半透明なのでカボションカットが多くなります。

ナニス NANIS / Brand Jewelry 2016Winter-2017Springより。

静かに波打つ海に人は心癒されるように、アクアマリンの海のようなブルーの色味は、見ているだけで緊張がほぐれ、日々のストレスが和らいでいくような気持ちになります。主な産出国はブラジルですが、ナイジェリア、モザンビークなどでも採掘されています。

濃いマリンブルーを宿したアクアマリンは最高品質とされ、「サンタマリア・アクアマリン」と呼ばれています。ブラジルのミナスジェライス州にあったサンタマリア鉱山からかつて濃い青のアクアマリンが多く産出されたため、そのように呼ばれるようになりました。現在サンタマリア鉱山は閉山していますが、他の鉱山でも濃いブルーの結晶が産出されるようになったので、濃くて美しいアクアマリンには産地関係なく「サンタマリア・アクアマリン」と呼ばれているようです。

ラフカットアクアマリンネックレス。/BIZ SHIMADA SETSUKO

人生に迷った時、希望の光をもたらすとも言われているアクアマリン。荒れ狂う波にも負けない船乗りたちのお守りとされてきた歴史もあるので、身につけることでこれから歩んでいく人生という航路を良い方向に導いてくれそうです。

*トップ画像:リオ・ルーア Brand Jewelry 2016 Summer-Autumnより。

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