5月の誕生石、エメラルド。南米やアフリカ……、産地によって色に違いがあるって本当?
Written by MACHIDA Akemi
じっくり見てみるとじつは色や透明度、インクルージョンに違いがあるエメラルド。青い色を含まない緑色から黄色みがかったグリーンまでさまざまな色が存在する。
あなたの好みはどこ産のもの? コロンビア、ブラジル、ザンビア、ジンバブエ、パキスタン?
食材の産地を気にするのと同じように、宝石もトレーサビリティが重要視され始めています。昔は宝石の産地がどこであっても美しければいいという人が多かったのですが、今は購入する際にどこで採れた宝石なのかを店員に聞く人が増えているようです。
ところで、5月の誕生石でもあるエメラルドといえば、どんな緑色をイメージしますか? 湖面のような鮮やかなエメラルドグリーンの色が特徴ですが、そんな美しいグリーンにも濃い色、薄い色、微妙に黄色みが強い色など、じつは産地によって少しずつ色が違います。これは、生成する時の周りの環境によるもので、クロムの量、鉄の量などが土地によって違うからです。宝石業界のプロはエメラルドをパッと見ただけで産地がわかるといいます。
エメラルドの産地で有名なのはコロンビアです。日本からは北米を経由して約19時間30分かかる遠い国ですが、代表的な鉱山がいくつかあり、世界最高級と言われるエメラルドが産出されます。色は比較的青い色を含まない美しい緑色が特徴です。他の産地と比べ大粒の原石が採れるので、大きいサイズを探している人はコロンビア産のエメラルドを探してみるといいでしょう。
コロンビア産のエメラルドは各鉱山によっても色に違いがあります。中でもムゾー鉱山では、青みのない深い緑色に柔らかな風合いのエメラルドが採れます。透明度が高く、内側から沸き立つような緑の明るさ、照りは、まさに息を吞むほどの美しさです。
チボール鉱山では、ムゾー鉱山に比べるとやや青みのあるエメラルドが採れるようです。インクルージョンも少なく鮮やかな緑色が特徴です。コロンビア産は原石の形が六方柱形をしているので、ラウンドではなくエメラルドカットに研磨されることが多くなります。
コロンビアの隣に位置するブラジルでも良質のエメラルドが産出されます。ブラジル産エメラルドは、濃い青みがかった緑や、淡いグリーン、黒っぽい緑などさまざなま色が産出されます。ミナスジェライス州のノバエラ鉱山とイタビラ鉱山が有名で、近年品質のよいエメラルドが見つかっており、コロンビア産に匹敵するほどの美しい色のものもあります。
アフリカ南部の中央部にあるザンビアもエメラルドの産地として知られています。アフリカというと治安が悪いというイメージかあるかもしれませんが、ザンビアは1964年にイギリスから独立以来、内乱や戦争が一度もない平和な国です。ザンビア産は青みを帯びたグリーンが特徴で、クールな印象があります。原石は丸みを帯びたものが多いため、エメラルドカットよりもオーバルシェイプやペアシェイプにカットされることが多いようです。コロンビア産やブラジル産に比べるとインクルージョンが少なく透明度が高いのも特徴です。
ザンビアに隣接しているジンバブエでもエメラルドが採れます。サイズは小粒ですが、美しい黄色みを帯びた明るいグリーンが特徴で、他のエメラルドとはまた違った魅力があります。ジンバブエで産出されるエメラルドは、主に一辺が3ミリ以下でラウンドカットやスクエアカットに研磨され、よくパヴェセッティングに使われます。産出される鉱山の名前をとって「サンダワナエメラルド」と呼ばれることもあります。
他にはパキスタンでも産出されています。パキスタンの緑豊かなスワート渓谷からはエメラルドグリーンの非常に綺麗な色の石が産出されますが、小さな結晶しか採れません。たくさん採れても宝石にできるレベルのものはごくわずかです。
どの地域にも言えることですが、エメラルドの産出量は減ってきています。広大な大地で、何か月もドリルで掘っても見つからない時もあるといいます。産出量は減ってもエメラルドを欲しがる人は世界中にいるので、今後はますます市場価値が上がっていくのは予想できます。エメラルドの購入を考えている方は産地によって変わる色の違いを見比べながら、自分に合うものを探してみてはいかがでしょうか。
*トップ画像:Lorraine Schwartz/Brand Jewelry 2018 Summer-Autumn
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