No.37ジューンブライドに思う、広告や宣伝によって拡大した日本のブライダル事情
BJI ブログ No.37
「ジューンブライド(6月の花嫁)」、ヨーロッパで「6月に結婚する花嫁は幸せになれる」という言い伝え。今ではすっかり日本でも定着していますが、そのきっかけは式場側の「企業戦略」によるものだったそう。
6月のヨーロッパは気候が良く雨も少なくて気温も快適だから結婚式にも最適ですが、日本ではその時期はちょうど梅雨。結婚式当日が雨になる可能性が高いため、梅雨の時期に結婚をするカップルは少なく、ホテルや結婚式場は閑散としていました。
そこで、当時ホテルオークラの副社長が、梅雨の時期に落ちる売り上げをなんとかするために海外のさまざまな結婚事情を調べる中で、前述の言い伝えを知り、1967年からそれを宣伝することで全国に広まっていったということです。
ところで、式のイベントに欠かせないのが、結婚指輪の交換。結婚指輪の起源は、9世紀のローマであるといわれています。婚約指輪は古代ローマ時代からあったので、結婚指輪の習慣はずいぶん年月が経ってから広まりました。
ヨーロッパでは1000年以上前から存在していた結婚指輪ですが、日本にやって来たのはそれからずっと後の明治時代。鎖国がなくなりキリスト教が普及し始め、キリスト教式の結婚式が行われるようになってからです。
その中でもちろん「結婚指輪の交換」も広まっていきました。またこの頃、結婚指輪の広告が登場することで認知度が高まっていき、大正時代には結婚指輪を身につける習慣が定着、式のスタイルに関わらず結婚するときの必須アイテムとしてその地位が確立されました。
日本で婚約指輪が定着したのはさらにずっと後で、昭和30年代以降。それまであったダイヤモンドの輸入制限がなくなり供給が一気に増えたこと、高度成長時代の真っただ中であったこと、そしてダイヤモンドのPR会社による大々的なキャンペーンが功を奏し、ダイヤモンドの婚約指輪が定着しました。
「婚約指輪は給料の3カ月分」というキャッチフレーズを信じ、どれだけの新郎が泣いたことでしょう(苦笑)。現在では、婚約指輪の相場は給料の1カ月分程度らしいですね。式も指輪交換もしないカップルも増えてきていますが、実際式を挙げた人たちは「やってよかった」という感想が多いよう。
日本におけるジューンブライド、結婚指輪、婚約指輪が広まったのは、広告の力や企業戦略にもよるものですが、今やすっかり定着、習慣化しているのは、やはり多くのカップルがそれらを求めていたからだと言えるでしょう。(C)
参考資料:『日本装身具史―ジュエリーとアクセサリーの歩み』美術出版社