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『日本の女性ジュエラー20の表現 JAPANESE WOMEN JEWELERS』デジタル版をAMAZONで販売中

Written by WATANABE Ikuko

日本の女性のジュエラーを取り上げた初めての書籍。デジタルブックできれいな画像を楽しめます。


ジュエリーの歴史を遡ると、ジュエリーは王侯貴族や宗教者が権威や守護神の象徴として身につけ、そして妻や愛人、子供にプレゼントしていたという状況が長らく続いていました。女性たちが自分のために自分で買うようになったのは、20世紀に入ってからです。また、ジュエリーを製作する仕事は力を要するため、男性の職人の仕事でした。職人はデザインから作りまで一貫して行いました。それが徐々に女性の中にも作る人が増え、1960年代以降、日本でもジュエリーデザイナーという職業が女性の間で花形となりました。そして現代、男女による職業選択がなくなり、女性の職人も、ジュエリー企業の経営者も増えています。

そのような社会の流れを汲んで、日本で初めて女性のジュエリーの作り手にスポットを当てたのが『日本の女性ジュエラー20の表現 JAPANESE WOMEN JEWELERS』です。意外に聞こえるかも知れませんが、ジュエリーの世界は今でも男性社会です。そこに一石を投じることを願って出版しました。

ジュエリーはどこか似たようなものに出会うことが多いですが、本書では極力デザイン性が重ならない作り手を取り上げました。それぞれ個性が違い、女性ならではの感覚を生かしたもの、あるいはこれまでのジュエリー業界の常識から外れた作品も含まれています。そして、鑑賞のための作品でなく、末長く着用できる高品質な作り、素材のジュエリーを選んでいます。

とくに若手のジュエラーに読んでいただきたい一冊です。高額なジュエリーは自分のライフスタイルに一致しないかも知れませんが、手が届かないもの、未知のものを見ること、知ることは、成長の上で糧になります。身近なもの、等身大のものでは得られないものが必ずあります。

【AMAZON Kindle版が初めての方に】
アプリをダウンロードするとパソコンやタブレットなど様々なデバイスにダウンロードして読むことができます。
書籍でも販売しています。

ー本文より抜粋ー

雑誌や書籍の編集を通して、ジュエリーの業界というものに深く関わるにつれて、ある一種の違和感を感じるようになりました。 女性が身につけるものなのに、なぜ女性のオピニオンリーダーがいないのだろう。 フェミニズムといった思想など持っているわけではありませんが、単純に、業界における女性の存在感の薄さを不思議に感じたのです。 かつて雑誌の取材でファッションを追いかけていたことがありますが、ファッションは20世紀初頭から既にマドレーヌ・ヴィオネ、ココ・シャネル、ジャンヌ・ランバンなど女性が活躍し、そして1960年代以降、日本から森英恵、川久保玲が世界に飛び出し、東京を中心に、欧米とは異なる日本独自のファッションやカルチャーの浸透に貞献したことは周知の通りです。 一方、ジュエリーでは、特にダイヤモンドや真珠の世界に踏み込むほど、男性を中心に回っていることが分かってきました。これは日本だけでなく、海外でも同じようなものです。宝飾史を幡けば、本書の後半、監修の山口遼氏の文書でも表されているように、 作り手も身につける人も男性だったことが明らかです。 しかし、21世紀の今日では違和感を感じる状況です。

そんなことを思いつつ取材しながら、数年前、毎年通っているイタリアのジュエリーショーで、ある変化に気づきました。ジュエリーメーカーやジュエリーの団体に女性のトップが増えていることでした。この流れは当然で遅すぎるくらいです。 改めて日本で周囲を見渡すと、趣味や作品ではなく、収益を考えながら本腰でジュエリーを制作し、起業する女性が増えていることが分かってきました。 デザインするばかりでなく、危険と言われる採掘場まで出向く女性もいます。これなら、女性のジュエラー(デザイナー、クラフトウーマン、宝飾企業の代表など)だけの本が作れるのでは、と思いました。

出版にあたり誌面は限りがありますので、 いくつかの規定を設け取り上げる方を選びました。 第一がアクセサリーではなくファインジュエリーを作っている人。 ファインジュエリーとは流行にとらわれず、時間が経過しても残り続けるだろうと推測できるジュエリーのことです。 第二に、商品として売るためのジュエリーを制作している人。どんなに素晴らしい作品を作っていても、販売しない作家は候補からはずしました。 第三に、独自性が見える作品を作っている人。この第三を決めるのが最も難しく、山口氏にアドバイスをいただきました。そしてできるだけ、手法やデザインの傾向が似ていない方を選びました。

掲載できなかった方も含め、大勢の女性のジュエラーにお会いして、ジュエリー関わっている女性達のジュエリーに対する情熱や思いを知ることができたのが、この企画で得た一番の収穫です。一人一人が自分で考え、切り開き、新しいジュエリーを創りだそうと切磋琢磨されていて、良い刺激を受けました。

人口減少、節約志向、価値観の変化など、さまざまな影響により嘆きばかりが聞こえてくる日本のジュエリーマーケットですが、女性の起用しだいで、また、新しい展開を期待できるのではないかと思います。

本書を通じて、日本の女性ジュエラーの強い精神性、創造性、仕事力を汲み取っていただければ、編集者の冥利に尽きます。(文・渡辺郁子)


掲載作家・ブランド

穐原 かおる・・・・(ギメル)
髙橋 まき子・・・(MAKIKO TAKAHASHI COLLECTION)
久保 富子・・・(クィーンコーラル)
永坂 景子・・・(K デザイン)
今井 訓子・・・(IMAI kuniko KYOTO)
芋縄 由佳・・・(ロータスコレクション)
能勢 利枝・・・(ジャルダン プランタニエ

大林 智子・・・(TJ コレクション)
脇島 明希奈・・・(アプレ)
だん すみよ・・・(Pura)
吹田 眞輝江・・・(S.MAKIE)
島田 節子・・・(BIZ)
中嶋 彩乃・・・(AYA-N)
川添 微・・・(honoka kawazoe)

山本 実紀・・・(KALMIA)
首藤 彩・首藤 いずみ・・・(SHUDO)
石井 稚子・・・(WAKAKO GRACE)
五味 和代   


KASHIKEY ・・・ 小寺 智子
MIKIMOTO・・・高野 曜子・豊田 美佐子・吉崎 佐知江


穐原 かおる / ギメル
Akihara Kaoru / Gimel

現代の日本でトップの女性ジュエラーを挙げるとすれば、ギメルを主宰する穐原さんだろう。芦屋の山のてっぺんに広大なスタジオを構え、世界に通用するジュエリーを送り出している。その経歴は別の項目に書くが、彼女が作り出すジュエリーについて、触れてみたい。
ギメルの作品は、日本人の、それも女性ならではのジュエリーである。甚本的には自然の文物をデザインのテーマとしており、抽象のものは少ない。その自然のテーマを、極めて上質の宝石だけを使い、最高の製造技術を使って、この上なくデリケートな作品にしたもの、それがギメルのジュエリーだ。
特に使う宝石の質へのこだわり、そのほとんどは穐原さん自身が選ぶというこだわりは業界でも有名であり、多くの宝石業者を泣かせている。
作りの中心はパヴェと呼ばれる小さな宝石を密集させて埋め込むもので、この技術は最近では世界中の宝石商が使っているものだが、ギメルのジュエリーほど、 繊細かつ精密なものは少ない。 ほかの国のデザイナーが作るパヴェのジュエリーは、大柄で鬼面人を驚かすというものが多いが、日本人が好む繊細さはない。この辺りが日本人の、しかも女性ならではのギメルのジュエリーの特徴だろう。
ジュエリーの評価には、二つの面がある。一つは 言うまでもなく、今売れるかということであり、もう一つは後世に伝えられるものであるか、つまり50年、100年経ってもアンティークとして扱えるかということだ。
穐原さんのジュエリーは、この二つの評価で見た時に、十分に耐えられる日本では数少ない作品である。素睛らしい女性ジュエラー、それが穐原さんでありギメルの作品である。ー山口 遼ー

ブローチ「桜」Pt・ダイヤモンド・ピンクダイヤモンド・デマントイドガーネット
左/ネックレス「ループネックレス」PtPt・デマントイドガーネット・ダイヤモンド。ブローチ「すずらん」Pt・18KYG・デマントイドガーネット・ダイヤモンド・イエローダイヤモンド・ルビー  右/パールネックレス Pt・白蝶無核真珠・ダイヤモンド。ブローチ「コスモス」Pt・18KYG・ピンクダイヤモンド・パール・デマントイドガーネット・ダイヤモンド・サファイア。

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