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ブランドジュエリーオリジナルの特集記事です。

マリー・アントワネットのダイヤモンドブレスレット、11月クリスティーズの競売へ

Written by Kasahara Kana, Christie’s

フランス王妃マリー・アントワネットにまつわる歴史は世界中の人を魅了する。11月、クリスティーズに出品される「マリー・アントワネット旧蔵のダイヤモンド・ブレスレット」は全世界の熱い視線を集めている。


フランス王妃マリー・アントワネット旧蔵のダイヤモンド・ブレスレットがクリスティーズジュネーブで11月9日に開催する宝石オークションに出品される運びとなりました。宝飾品部門のフランソワ・キュリエルは「創業から255年にわたりクリスティーズは、世界中のロイヤルハウスの歴史的なジュエリー作品を取り扱ってまいりました。今回このような特別なブレスレットを弊社オークションにて世界中のコレクターの皆様に御紹介できますこと、誠に光栄でございます。近年のオークション結果が示すように、来歴の良い作品は高く評価されております」と話しています。

ゴールドとシルバーで緻密に作られた一対のブレスレットには計112個のオールドカット・ダイヤモンドがセッティングされています。王妃がブレスレットを購入したのは即位2年後の1776年。当時の購入価格が250,000リーブルであったことが母マリアテレジアが王妃に宛てた手紙に記されており、夫の国王ルイ16世からの資金と王妃自身の宝石コレクションのいくつかで支払われました。また近年、宝飾歴史学者ヴィンセント・メイランの研究から、宝石商ベーマーへ支払う頭金29,000リーブルを国王が王妃に送ったとする記述も発見されています。ベーマーという名を聞くとマリー・アントワネットの歴史について詳しい方なら、ピンとくるでしょう。フランス革命前の詐欺事件「首飾り事件」のダイヤモンドネックレスの宝石商です。

画像© Christie’s Images Limited 2021

1791年、王妃と親交のあったオーストリア駐仏大使メルシー=アルジャントーはフランス革命の動乱を避け、居を移したブリュッセルで1通の手紙を受け取ります。テュイルリー宮殿に囚われていた王妃が「木製のチェストを送ったので保管しておいて欲しい」と託したものでした。数カ月をかけて無事に到着したチェストは封印されたまま保管されて、その後、1793年に王妃が断頭台の露と消えると、オーストリア皇帝フランツ2世の命により開かれ目録が作成されました。

その中に収められていたジュエリーの1つと考えられているのが今回出品されることとなったブレスレットです。チェストは1796年に唯一生き残った長女マリー・テレーズがオーストリアに亡命すると同時に返還され、1816年に描かれた肖像画でも両腕にダイヤモンドのブレスレットを着けた姿が描かれています。

マリー・テレーズには子どもがいなかったため、1851年に彼女が世を去ると財産は3人の甥・姪が相続しました。ブレスレットを含む宝飾品の数々は姪ルイーズ・ダルトワの手に渡り、以降、現在まで欧州王室に継承されています。

今回のブレスレットのエスティメートは200万~400スイスフラン(約2億6000万~5億2000万円)ですが、いくらで落札されることになるのでしょうか。200年の時を超え初めて公の場に現すことになった王妃マリー・アントワネットのブレスレットに注目が集まります。

取材協力: クリスティーズ 担当:笠原可名 TEL 03-6267-1766



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