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No.75 エメラルドとダイヤモンド製のレンズ。ムガール王朝のメガネ、その機能性は?

BJI ブログ No.75

近視や乱視、老眼といった症状に日常欠かせないメガネ。最近ではおしゃれなデザインも増えファッション的な要素もありますが、「視界をよくする」のが一番の目的ですよね。

10月8日付のBBCニュースによると、オークションハウスの老舗 サザビーズで、メガネが2点販売されます。それぞれダイヤモンドとエメラルドのレンズが入っている17世紀のムガール王朝時代のもので話題を集めています。

メガネは、10月27日 にロンドンで開催される「Arts of the Islamic World&India(イスラム世界とインドの芸術)」においてオークションにかけられる予定ですが、10月11日~17日に香港で、10月22日~26日までロンドンで一般公開、販売価格は150万ポンドから250万ポンド(約2億2400万〜約3億8150万円)になるだろうと予想されています。※結果がわかり次第、この記事を更新し、報告します。

サザビーズによればこのメガネの制作を依頼したのは誰なのかいまだ不明ですが、宝石の品質とサイズからいって「16~17世紀に世界を席巻したムガール王朝の皇帝のために確保しておいたものに違いない」ということです。

ムガール王朝の繁栄を象徴する巨大なエメラルドとダイヤモンド

エメラルドのメガネは、「楽園のためのエメラルド」という名前が付けられ、2つのドロップ型のエメラルドのレンズは、コロンビア産の1つのエメラルドからカットされたもの。重さは300カラット以上、レンズの大きさはそれぞれ 長さ2.6cm x幅 2cm x 厚さ0.295cmとなっています。 

一方ダイヤモンドのメガネは「光のダイヤモンド」という名称で、ダイヤモンドのレンズは200カラット以上の重さ、1つの天然ダイヤモンドから半分にカットされたもので、インド南部ゴルコンダ鉱山からのものであると考えられています。レンズの大きさは、1つが約2.5cm x 2.3 cm x 0.159cm、もう1つが約2.4cmx 2.2 cm x0.171cm。

シルバーとゴールド製のフレームはともに1890年頃にはめこまれたもので、エメラルドのメガネは総重量27カラットのオールドカットダイヤモンドとエメラルドがセッティング、ダイヤモンドの方は25カラットのフラットカットのダイヤモンドに小粒のオールドカットダイヤモンドがセッティングされています。

1カラットが0.2gですので、ダイヤモンド200カラットのレンズの重さは、40g、エメラルドなら60g。通常メガネの平均的な重さは35gと言われているので、かなり重いですね。しかも、エメラルドやダイヤモンドをレンズに使うって? 本来のメガネとしての機能はどうなんでしょうか?

サザビーズによるとかつてダイヤモンドは「名声を高めること」を表し、エメラルドは「病を治し悪を追い払う」と考えられていたため、これらのメガネは「視力矯正」ではなくスピリチュアル的な目的で作られたもののようです。

もしこの豪華なメガネをつけられるとしたら……ちょっと興味がありますが、現実としては重さで数分後には頭痛がしてきそう。ネットで画像を見ながら、きらびやかなムガール王朝時代を想像するにとどめておいた方がよさそうです。

*サザビーズで入札にかけられたダイヤモンドとエメラルドのメガネ、どちらも今回は落札に至りませんでした。(更新)

トップ画像:https://www.sothebys.com/en/buy/auction/2021/arts-of-the-islamic-world-india-including-fine-rugs-and-carpets-2/a-pair-of-mughal-spectacles-set-with-emerald

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