No.109 ダイヤモンドセッティングの革命「ティファニー セッティング」
BJI ブログ No.109
アガサ・クリスティ原作の映画「ナイル殺人事件」(ケネス・ブラナー監督)が、2022年2月25日に封切られました。2020年の12月に日米同時公開する予定だったのがコロナで延期、公開が待たれていたものです。
中でも話題となっているのが、大富豪の娘リネット役のガル・ガドットが、ティファニーのダイヤモンドネックレス(なんと、128.54カラット)を身に着けて登場するシーン。彼女の胸元に燦然と輝く大粒のダイヤモンドは、絶対的な存在感を放っていました。
過去にはオードリー・ヘプバーンが映画「ティファニーで朝食を」の広告用写真で使用。もっとも最近では2019年にレディー・ガガがオスカー賞を受賞したときに着用していたことから公開前から話題となっていたものです。
ティファニーといえば、現代の婚約指輪の定番デザインを作った立役者。1886年ティファニーの創業者、チャールズ ・ティファニーがダイヤモンドを6本の爪で高い位置に留め、裏面は開いた状態で光をあらゆる角度から取り入れ、大きく反射させる「ティファニー セッティング」を開発したことで有名になりました。
ダイヤモンドのカットは17世紀末頃発明されたラウンドブリリアンカットを採用。このカットは切子面から入り込んでくる光を取り込んで、内部で効率よく反射し、より美しい輝きが増すという効果があります。ティファニーセッティングが登場する前までは、ダイヤモンド、色石ともにセットをした石の裏面(台座)を完全にふさいだクローズト セッティングが主流でした。特に底の部分が平たいローズカットダイヤモンドには、石の裏の部分に銀や錫で作った金属の箔を張ったものが多く見られます。石の下の白さに違和感が見て取れ、「箔」であることは一目瞭然です。
今なら石に箔が貼ってあるものは「アクセサリー」と位置付けられているので、「え?これって本物なの?」となってしまいますが、当時はそれがダイヤモンドを白く、少しでも輝かせるための最善の方法だったわけです。
ティファニー セッティングのような裏が開いているセッティングを総称して「オープンセッティング」と呼んでいます。このセッティングが登場した背景には、以下の理由が考えられます。
1.1879年エジソンの白熱電球の発明
かつてはろうそくの光がメインだった舞踏会。白熱電球の発明により、色石や真珠よりも白いダイヤモンドに注目が集まるようになります。ダイヤモンドも柔らかな光のオールドカットよりもさらにキラキラと輝くラウンドブリリアントへと移行しました。
2.18世紀後半~19世紀、フランス革命をはじめ多くの紛争によりヨーロッパが疲弊
ダイヤモンドや金属をあまり使わずに、いかに美しいジュエリーを仕上げるかが職人の腕の見せどころとなり、技術が向上しました。
3.南アフリカ・キンバリーにおけるダイヤモンドラッシュ
1867年に発見されたダイヤモンド鉱山の採掘量は、数年のうちに2000年以上にもわたってダイヤモンドを産出してきたインドを超えてしまうほどになりました。ティファニーのイエローダイヤモンドの原石もこのキンバリーから採掘されています。
ジュエリー製作は時代とともに変化しています。セッティング一つとってもそこにはさまざまな時代背景があることがわかりますね。
Top画像:ブランドジュエリー 特別編集 Bridal Jewelry2013/Tiffany & Co.
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