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ジュエリーと、ジュエリーにまつわるさまざまなエピソード

No.115 オルブライト元国務長官、着用したブローチは外交手段の一つだった!

BJI ブログ No.115

2022年3月23日(水)、アメリカの政治家でクリントン政権時に初の女性国務長官として活躍したマデレーン・オルブライト氏が84歳で亡くなりました。国務長官時代には、バルカン半島で起きたコソボ紛争の解決に奔走、北朝鮮の核ミサイル問題の解決のために2000年にはアメリカの現職の閣僚として初めて北朝鮮を訪問、金正日総書記とも会談しています。(残念ながら、この問題はまだ未解決のままですが。)

その後のコンドリー・ザライス、ヒラリー・クリントン、そして現在の副大統領カマラ・ハリスと、女性政治家の活躍の場を広げることになったのもこの人の存在が大きかったといえます。

1937年旧チェコスロバキアのプラハで生まれ、ナチス・ドイツの侵略や共産主義者の圧政を逃れた幼少期の戦争体験から、平和への思いは人一倍強い人としても知られています。2022年2月にロシアがウクライナを侵攻する前日にはプーチン政権の姿勢を非難するなど、死の直前まで自身の意見を『ニューヨーク・タイムズ』に寄稿にしていたパワフルウーマン。

一方、ファッションやジュエリーへの関心も高く、熱心なブローチのコレクターでもあった彼女、その数はなんと200個を超えているというからびっくりです。国際会議の場や各国首脳や要人との会談の際、さまざまなブローチを身に着け、外交政策のメッセージを伝えていたことはよく知られています。

2009年、今まで身に着けてきたブローチにまつわるエピソードについて『READ MY PINS(私のブローチの意味を読み解いて)』という本も出版、ジュエリーを「意味のあるメッセージ」として身に着けたのは女性ならではと感じました。2010年、その功績をたたえられ、アメリカのジュエリーの業界団体ジュエラーズ・ オブ ・アメリカ(Jewelers of America)主催のジェム・アワードを受賞しています。

3月28日付アメリカ『ナショナル・ジュエラー』誌の電子版の記事では、以下のような作品が紹介されています。
1.リア・ラビンの「鳩」のブローチ
フランスのコスチュームジュエリーのブランド、セシル エ・ジャンヌの金メッキ製のこのブローチは、1995年暗殺されたイスラエルのイツハク・ラビン首相の未亡人リア ・ラビンからの贈り物。オルブライト元国務長官は1997年8月、ナショナル・プレス・クラブに出演するために着用し、中東での和平交渉のアイデアとこの地域への訪問計画について説明しています。その後、イスラエル訪問の際、リア・ラビンから新たに鳩の群れをフィーチャーしたおそろいのネックレスが彼女に贈られました。1997年、ルワンダでの虐殺の犠牲者に敬意を表すため再びこのピンを着用しています。

2.「見ざる、言わざる、聞かざる」の三猿のブローチ
日本の民間伝承の一部であるこのサルたちは、本来の意味は、「他人の欠点やあやまちなど、悪しきことは、見ようとせず、聞こうとせず、言おうとしないのがよい」ということですが、オルブライトは「間違った考えや行動に対してそれを受け入れる」こと。つまり、何か間違っていることを知っていながらそれを無視したり、反対意見を述べず無関心でいること」にも通ずるのではないかと考えました。ブリュッセルで、ピンク、紫、オレンジ色のガラスのカボションにクリスタルで囲まれたタグアナッツ(象牙椰子の実)に刻まれたサルが描かれたこのピンを購入した彼女は、2000年初頭にロシアのウラジーミル・プーチン大統領と会う際、初めて着用しました。そこに隠されたメッセージは、ロシアがチェチェンへの人権侵害に対する警告を意味しています。

3.トンボのブローチ
 英語の直訳では「悪魔の最愛の針」と言われるトンボは、日本語では「勇気」「幸福」「力強さ」に通ずるとあり、敵対者にオルブライトが地球に対してどんなことを感じているのか思いめぐらせてほしい時に身に着けていました。

国立アメリカ外交博物館のウェブサイトでは、現在、元長官が在任中の1997~2001年に使用したブローチを紹介するオンライン展示会を開催中。上記の作品のほかに、ベルリンの壁の一部を使ったものや地球環境保護を訴えるホッキョクグマをデザインしたものなどヴィンテージものからコスチュームジュエリーまで、宝石をちりばめたものやブランドというよりもデザイン性が豊かでエスプリに富んだものが多く見られます。

博物館は2024年に新たにオープンする施設内で、彼女のブローチの展示会を開催する予定。ジュエリーに秘められた彼女のメッセージ、実際この目で感じたいものです。

イタリアはジュエリーの国です。紀元前にゴールドジュエリーの細工技術が発達し、今に伝わっています。ゴールドの表面に細い筋を入れ、落ち着いた質感がこのブローチの魅力です。¥198,000 オンラインショップはこちら。

メノウの自然にできた模様を利用し、研磨や染色など行い、絵のように見せた「ピクチャーメノー」という東京のジュエリーメーカーmimaの作品。猫や月や18金です。¥220,000 オンラインショップはこちら。

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