BJI ブログ No.159

バルセロナデザインミュージアムでは、2022年9月22日～11月27日、スペイン・カタルーニャ地方、サバデル出身のEnric Majoral（エンリック・マヨラル）による「The Expanded Jewellery（拡大されるジュエリー展）」が開催されています。

バルセロナデザインミュージアムは、装飾美術館、テュスチルイドゥンダリーア美術館、ガビネデザルアーツグラフィクコレクションなど、いくつかの既存の美術館を統合し、2014年12月にリニューアルオープンした美術館。バルセロナの文化研究所の新しい中心となり、美術館や研究所として機能する傍ら、デザインの世界の解釈や活用の促進を目的とし、空間デザイン、製品デザイン、情報デザイン、ファッションの4つの部門に焦点を当てています。

「エンリック・マヨラル The Expanded Jewellery展」では、マヨラルの159点のユニークな作品を、年代順ではなく、彼のユニークな言語とスタイルを理解できるように８つのエリアに分けて展示しています。

最初のエリアでは、彼のジュエリー製作の原点ともいえる1973年移り住んだ地中海西部の島フォルメンテラ島からインスパイアされた象徴的で精神性を実感できるゴールドやシルバーのジュエリーを展示。

第２のエリアは、お守りジュエリー。作品は先祖に言及していたり、彼に影響を与えたギリシャ、フェニキア、アフリカの特徴が見られます。

第３のエリアは、「空間の詩学」と題され、彼の内面性と知覚経験に目を向けた詩的で象徴的な一連の作品をまとめています。フォルメンテラ島の貯水池やカタルーニャ ロマネスク様式の田舎の礼拝堂などのプリミティブな建築物、生命が誕生する自然界の創造されたジュエリー。たとえば、露水を集める小さな石のくぼみから発想を得たcuconets pendant（キュコネットペンダント） (1998-1999) も、この地域で見られるジュエリーの一つです。

第４のエリアは、宝石箱。それらは家材料や貝殻、植物、フォルメンテラ島のごつごつした岩の地形や海からできる粒子を利用しています。たとえば、1998年製作のGabietes（ガビエテス）という名のゴールド、またはシルバー製の小さな鳥籠には、巻貝や地中海で見られる海洋植物であるポセドニアなどの自然の素材が入っています。

第５のエリアは、有機素材を使ったジュエリー。マヨラルと島との密接な生命力と創造性を反映するいくつかの作品が集められています。ウールや糸、色を取り入れた作品が見られます。

第６のエリアは、砂の宝石。素材はポリウレタンに、シルバー特有の酸化を利用、そこに顔料を足すことでさまざまなな色に変化したものをジュエリーへと昇華しています。ペンダント、ブローチ、ブレスレット、リングの一連のアイテムがありますが、マヨラルは製作の上であらゆるテクニックを無視、即興で不完全な美しさを表現しています。

第７のエリアは、手、道具、物質への直感的なアプローチにより動きのあるジュエリーを表現しています。それは非常に表現力豊かで生き生きとした質感のあるジュエリーです。その一例が、シルバーとアクリル塗料で作られたcuconets necklace（キュコネット ネックレス）（2006年）です。

最後のエリアは、共通の手順に基づく「宝石のネーミング」についての展示です。彼の作品を観察し、構造、素材、温度、色、質感を認識し、身に着けて動き、その後名前がつけられます。カタルーニャ語でキョウチクトウを意味するBaladre (2012)や、空気を意味するAire (2013)という名のシルバーやゴールドのピースをつなげた動きのあるネックレスが展示されています。そしてこの展示会のフィナーレを飾るのが惑星のように天井からつるされた軽やかな彫刻のインスタレーションL’Aiguador（ライグァドール）。シルバーにペイントされたブルーや白の花びらのようなパーツがひらひらと上から下に連なっている様子は、メタルと色が共存した満開の花のようにも見えます。

普段感じているヨーロッパジュエリーとは一味違う、ユニークなカタルーニャのジュエリーの世界、一度覗いてみたいものです。

TOP画像出典：klimt02.net

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