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ジュエリーと、ジュエリーにまつわるさまざまなエピソード

No.191 『ヴォーグ』で活躍した最初のアフリカ系アメリカ人ファッション・ジャーナリストのオークション

BJI ブログ No.191

1980年代にアフリカ系アメリカ人として初めて『ヴォーグ」のファッションディレクターとなり、2013年まで活動したアンドレ・レオン・タリー氏。2022年、新型コロナウイルスと心臓発作による合併症で亡くなりました。享年73歳でした。ミッショル・オバマ夫人、マライア・キャリー、リアナ、ビヨンセなど大勢の著名人が追悼の意を表しました。亡くなって1年後の2023年2月、クリスティーズ・ニューヨークに、タリー氏のオートクチュール、ハンドバッグ、ジュエリー、美術、文学、装飾芸術が出品されました。コレクションは全体として魅力的で親しみやすく、カール・ラガーフェルド、トム・フォード、アナ・ウィンターなどのセレブ達との数十年にわたる交友関係を反映しています。

たとえば、彼のアイコンともいえるカンカン帽、タフタのドレス、絵画、彼自身のポートレート、懇意にしてきた人たちとの写真、アンディ・ウォホールの作品、ルイ・ヴィトン(映画「セックス&ザ シティ」にも登場したモノグラムのスーツケースも!)など、最先端のモードを彷彿とさせるものばかりです。

売上高は合計で 350万ドル(概算4億8千万円)を超えたということです。中には、シャネルのコスチュームジュエリーが4点含まれていました。

ゴツゴツとしたアメシストのジオード(結晶の塊)にグリポワガラスをはめこんだ大ぶりのブローチやペンダントやとともに、目を引いたのはブルーとグリーンの色違いの2点のバングルです。グリポワガラス、イミテーションパール、ラインストーンをあしらったこのバングルは、落札予想価格は4,000~6,000USドルでしたが、実際には11,340USドル(概算155万円)で落札されました。

すべての収益はクリスティーズによって、タリー氏が人生における「学びの中心である」と表現した2つの黒人教会、ノース・カロライナ州ダーラムのマウント・シナイ・バプテスト教会とハーレムにあるアビシニアン・バプテスト教会に寄付されました 。

アンドレ・レオン・タリー氏は、世界のファッション界で大きな影響力を誇ったアフリカ系アメリカ人ジャーナリスト。幼少期、黒人差別の影響下にあるアメリカ南部で育った彼は、ある日地元の図書館で『ヴォーグ』誌を発見したことがきっかけで、ファッションの世界に憧れを抱きます。彼のファッション界のキャリアは、1974年メトロポリタン美術館で元ヴォーグの編集長のダイアナ・ヴリーランドのもとでのインターンから始まりました。ヴリーランドに認められた彼は『ニューヨーク・タイムズ』などにも執筆するようになり、ついには憧れだった『ヴォーグ』で働くことになります。一時退職するもその後復帰、2013年まで同誌の名物編集長アナ・ウィンターの右腕として活躍、2008年には当時のファーストレディ、ミシェル・オバマ夫人のファッション・アドバイザーを務めています。

華やかなファッション界でも根強く残る人種差別。彼は60年にわたるキャリアの中で一貫して多様性を擁護してきました。それは、黒人デザイナーやモデルに対する支持にも見られます。人種差別は一筋縄ではいかない問題が山積みですが、影響力のある彼のやってきたことも今のBlack Lives Matterの運動にもつながっていったのではないかと思います。

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出典: christies.com


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