BJI ブログ No.192

ダイヤモンドの主産地であるロシアのダイヤモンドは表向きには世界市場からシャットアウト。当ブログNo.113でも取り上げたように、2022年2月のウクライナへの侵攻により、ロシア産ダイヤモンドは「紛争ダイヤモンド」としてアメリカでは輸入を禁止。大手ジュエラーも購入しないと発表しました。

しかし、EUではロシア産ダイヤモンドの輸入は相変わらず行われています。ロシア産ダイヤモンドの現状を、海外のサイトで検索してみました。

ベルギーにあるアントワープ・ワールド・ダイヤモンド・センター。ここでは、慎重かつ秘密裏に毎年370億ユーロ (約5.25兆円) の取引が行われています。

取引にやってきた宝石商に、ダイヤモンドの産地を尋ねるか？と聞くと「あえて尋ねることはしません」と答えるそうです。

「ダイヤモンドの原石は、アンゴラ、コンゴ、シエラレオネ、南アフリカ、そしてロシアからも届きます」と語るのは、アントワープの宝石店ビンソン・ダイヤモンドのオーナー、シガル・ヴァンゾフスキー氏。

アントワープは、数十億ドルの価値がある高級宝飾品の中心地であり、ロシアはウクライナでの戦争にもかかわらず、取引により多くの利益を上げ続けています。

ロシアの財務省は、2021年に4860万カラット以上のダイヤモンド原石を輸出したと発表しています。これは、2007年に輸出の統計を取り始めて以来最も多いものです。財務省は実際の輸出額の数字には触れませんでしたが、輸出先はほとんどがアラブ首長国連邦とベルギーに向けられたものです。

ベルギーはダイヤモンドの中心地、しかも欧州連合（EU)の本部があります。制裁についての話し合いの中、アントワープ・ワールド・ダイヤモンド・センターはロシアのダイヤモンドを措置から除外するよう働きかけたようです。

アントワープ大学経済学部長のコーエン・ヴァンデンベンプ氏は、「欧州は、ロシアに制裁を課すことで自分達も経済的に打撃を受けています。ロシアのダイヤモンド原石の輸入を止めれば、ダイヤモンドの中心地はドバイやムンバイに移るだけ。中東やインドではアントワープほど透明性や持続可能性を重視していません」と警告しています。

ドイツ連邦宝石商・宝石・時計小売業者協会 (BJV) の ヨアキム・ドゥンケルマン氏によると、「インド、イスラエル、アラブ首長国連邦などの国は、ロシアのダイヤモンドのボイコットに参加しません。つまり、ロシア産は依然として世界市場に出回るわけです」

そんな状況下でもロシア産ダイヤモンドを排除することには意義があります。*コモディティスペシャリストのラリサ ・スタンシュ氏は、「国庫に流れ込む資金が少なくなることを意味します。たとえダイヤモンド取引から得る収入がガスや石油取引からの収入よりもはるかに低いとしても、軍事資金に影響を与えるのではないでしょうか」と反論しています。

世界市場の約30％を占めるロシア産ダイヤモンド。ほとんどすべてのロシアのダイヤモンドは国家が支援するダイヤモンド採掘企業アルロサで生産されています。アルロサはアンゴラなど海外の鉱山にも出資する巨大企業。

アメリカも制裁規定を設けているとはいえ、そこにも抜け穴があります。ダイヤモンドが別の国で大幅に加工された場合、その地域が原産地であると主張することができるのです。たとえば、インドで研磨されたロシアの宝石は、そのまま「インド産の宝石」としてアメリカに輸入されるのです。

したがって、数十億の売上高を持つニッチな市場は、事実上手付かずのままと言えます。グローバル化された現代の中で、複雑に絡み合うさまざまな国々の経済事情。ダイヤモンド一つとっても、ウクライナ紛争が一筋縄では解決できないことを実感します。

*コモディティスペシャリスト：地域およびグローバル市場から入手した製品について、費用対効果と製品の原材料・部品の調達から販売に至るまで一連の流れについて戦略を考える専門家。社内外の会議に出席し、開発の最新情報を交換、特定の問題について商品管理者と情報共有なども行う。

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出典: straitstimes.com

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