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ジュエリーと、ジュエリーにまつわるさまざまなエピソード

No.195 2つの「オルロフ」。ロシアの王女が所有していたブラックダイヤモンドと、エカテリーナ2世のブルーダイヤモンド

BJI ブログ No.195

神秘的な輝きを放つ宝石には、さまざまなエピソードがつきもの。以前当サイトで、大粒ブルーダイヤモンド「ホープダイヤモンド」を紹介しました。今回は、2つの呪われたダイヤモンドについて書いてみました。

1つ目は「ブラックオルロフ」。ホープダイヤモンド同様、「所有者が次々と不幸な死を遂げた」という逸話がまことしやかに語られている、いわゆる「呪いのダイヤモンド」。

19世紀インドで発掘されたこのダイヤモンドは、当初195カラットの原石で、インドのヒンドゥー教の神、ブラフマーの彫像目の部分に埋め込まれていました。このことから、別名「アイ・オブ・ブラフマー」と呼ばれていました。

ある日ヒンズー教の僧侶に盗まれてしまいますが、その僧侶はすぐに殺害されたとか。その後なぜかそのダイヤモンドはロシアへ渡り、ナディア・ヴィージン・オルロフという王妃が所有していたことになっています。オルロフという名前はそこから来ているのですが、ロシアにはそのような名前の王妃は実在していないとも言われています。

その後オルロフは1932年、ヨーロッパのダイヤモンド・ディーラーであるJ.W.パリスという人物によってアメリカに持ち込まれました。その1年後彼はマンハッタンの高層ビルから飛び降り、命を落としました。

1947年頃、2人のロシアの王女 (2人ともブラックオルロフの元所有者) が、ヨーロッパに住むためにロシアを逃れ、どちらもその年に投身自殺で亡くなったと言われています。しかし名前をたどると、1人は1918年にスイスで102歳で亡くなっており、もう1人はオルロフという姓でしたが、当時80代後半。その年齢で果たして心を病んで自ら命を絶つことがあるのかという点から、その話は真実なのか疑問視されています。

1950年代チャールズ・ウィルソンがこの宝石を購入し、ダイヤモンドを3つにカットすることで、その呪いを断ち切ることにしました。1つはクッションシェイプにカットされ67.5カラットとなり、周囲に108個のダイヤモンドがセッティングされたゴージャスなペンダントブローチへと変貌。ネックレスにはトータル124個のダイヤモンドがついています。さまざまな人の手を経た後、2006年クリスティーズのオークションにかけられ、35万2千ドル(概算42,240,000円)で落札されました。しかし、残りの2つのダイヤモンドはどこに行ったのか今も謎に包まれています。

ブルーのオルロフ

2つ目のオルロフは、ブルーダイヤモンド。大粒のローズカットで、鳩の卵を半分にしたような形と形容されてきました。

インドのゴルコンダ地域で産出された可能性が高いということ以外はわからず、1700年代にフランス軍の脱走兵が荘厳な寺院から盗んだものだとか、ペルシャを支配したナーディル・シャーが所有していたところ、1747年の暗殺後に盗まれたとかいろいろな説があります。

その後1770年代初頭に、グリゴリー・グリゴリエヴィチ・オルロフ伯爵が、恋人である女帝エカテリーナ2世のために入手。贈り物はエカテリーナの心をつなぎ留めることはできませんでしたが、ダイヤモンドには彼の名前がつけられました。

エカテリーナ2世は1774年にこのオルロフを皇帝の笏にセットし、現在はそのままの形でクレムリン博物館に収められています。ダイヤモンドの重量が正確に計量されたことはありませんが、古い記録から約190カラットと考えられています。

同じオルロフでもブラックとブルー、2つのダイヤモンドの起源は全く違います。それぞれがたどってきた道も違い、どちらもミステリアスな魅力にあふれています。

特にブラックオルロフは、過去にロンドンやニューヨークの美術館で展示されていたこともあるのですが、現在は個人蔵で公に鑑賞できないのが残念。どんな人が所有しているのか気になるところです。

トップ画像出典:christies.com

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