No.196 北斎の浮世絵からインスパイアされたティアラ、ブシュロン・ウェーブティアラ
BJI ブログ No.196
全世界で850万人以上を動員したゴッホアライブ。当ブログNo.49「エミリー、パリに行く」の中でも触れていたこの展示会、日本でも巡回展がやってきました。東京、名古屋、そして2023年6月まで神戸で開催しています。
ゴッホの作品を1枚ずつ鑑賞するという従来の美術展と違い、真っ暗な広い展示室で360度ゴッホの世界をデジタルで楽しむという「没入型美術展」という新しい試みが話題となっています。
ゴッホと言えば、ご存知の通り日本の浮世絵に影響を受けた画家。彼が生きた時代、日本は江戸時代から明治へと変わる過渡期で、パリやロンドンで開催された万国博覧会にも参加するようになったころ。ヨーロッパに日本の工芸品や美術品が数多くもたらされ、日本への関心が高まっていきます。
そして芸術家の間で当時の日本の文化を取り入れた芸術運動、いわゆるジャポニスム(日本様式)が流行し、その動きは工芸品の世界にも広がっていきます。
その影響を受けたジュエリー作家では、トンボや蝶などをモチーフにした美しい作品を世に送り出したルネ・ラリックがよく知られていますが、今回紹介したいのはブシュロンの作品です。それは、1910年フランスの金細工師クーロに作らせた「ザ ウェーブ ティアラ」。
葛飾北斎の「富嶽三十六景 神奈川沖浪裏」をベースに、大波が打ち寄せる様子をそのままティアラのデザインへと昇華した傑作です。貴石だけでなく貴金属を巧みに使い、台座から波が打ち寄せるアシンメトリーなデザインを表現したティアラですが、その所在は不明となっていて、ブシュロンの古いアーカイブ写真からしかその存在を知ることができません。
波をモチーフにしたティアラとしては、他には1868年スペイン王室のためにメレリオが制作した「シェルティアラ」と呼ばれる大粒のパールとブリオレットカットのダイヤモンドを配したものや、2011年モナコ大公アルベール2世が妻シャルレーヌ妃へ結婚祝いに贈ったダイヤモンドとサファイアの「オーシャンティアラ」などが知られています。
ただ、ブシュロンのザ ウェーブティアラほど繊細で精巧、ダイナミックな作品はなかなか見当たらないそう。現物を見られないのは非常に残念なことです。
ブシュロンでは1909年「ドラゴン フライ ティアラ 」と呼ばれるトンボをモチーフにプラチナとダイヤモンドを使ったティアラを制作しています。これは、2022年11月スウェーデン・ストックホルムの老舗オークションハウス 、ブコウスキーに出品されました。その繊細で生き生きとしたトンボの姿は、ウェーブティアラの製作者と同じクーロではないか?と言われています。
どんな人が落札したのでしょう、そしてザ ウェーブティアラは今どこにあるのでしょう。興味は尽きません。
トップ画像出典:bukowskis.com
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