No.197 中国・清王朝時代の宮廷で絶大な人気を誇ったゴージャスな付け爪ジュエリー、指甲套(しこうとう)とは?
BJI ブログ No.197
マスク解禁も間近となり、外出が楽しくなってきた今日この頃。デパートの化粧品売り場では、口紅が売れるようになってきたとか。その色に合わせて、ネイルもちょっと奮発したくなる気分です。
ネイルと言えば、ここ20年ほどの間にマニキュアやジェルを塗った上にキラキラストーンやホログラムをのせてみたり、カラフルな模様や絵を描くネイルアートが浸透してきました。また爪本体に描いていくのではなく、爪の上に貼るだけでおしゃれなアートが楽しめる付け爪も人気。爪が弱い人やいろいろなデザインを気軽に楽しめるという点がいいですよね。
付け爪をいろいろと探していたら、ネイルガードという言葉に行き当たりました。発祥は中国、装飾が施された長細い円柱のような形をした金属で、指の上からかぶせるものです。
日本では指甲套(しこうとう)と呼ばれ、中国語でzhijiatao(指の爪)またはhuzhi(指の保護)と発音されるもので、明王朝に由来、清王朝で人気を博します。
指にかぶせるジュエリーは、どうして生まれたのでしょうか。古代から中国の貴族は、男女とも爪を長くしていました。長い爪は肉体労働をしなくてもよいことを意味し、それは富の象徴とみなされていました。
アジアでは現在でも小指を長くしている男性たちがいて、これは富のステータスシンボルとみなされています。つまり、自分の手を使う必要がない人ということです。
そういえば、日本でも昭和の時代、小指の爪だけ長くしていた中年以上の男性がよく見られました。それがとても不思議でしたが、元々は中国のこの慣習から来ていたのかしら?! 最近では、そんな男性はほとんど見かけなくなりましたけどね。
話を元に戻しましょう。
女性は通常男性より爪が長いため、指甲套は爪の破損を防ぐ目的で誕生したもの。しかし年を経て、装飾のために着用するアクセサリーという意味合いが強くなっていきました。最初のころは日常のアクセサリーとして、カジュアルな服装でのみ着用されていたようです。その後装飾が豪華になっていき、正装時にもはめるようになってきました。かの有名な西太后の指にも、ゴージャスな指甲套がしっかりとはめられた写真が残っています。
素材は、金、銀、青銅、または金メッキに、真珠、翡翠、べっこう、カワセミの羽が埋め込まれているものなどがあり、デザインもさまざま。花、鳥、動物、そして中国で縁起の良い竜をモチーフにしたものなどがあり、花の茎や葉などの彫金も美しく施されています。
その長さは、3cm~15cm(!)まであります。ただし、自分の好きなように作れるわけではなかったようです。一目で上下関係がわかるように、身分(格付け)によってその長さや宝石が決まっていたとか。
左右両手ペアで作られることがほとんどで、着用は片手だけ、または両手に。両手に着用する人は、特にステータスが高いことを意味していました。つまり何をするにもお付きのものがやってくれて、自分の手を使うことがなかったということです。
それにしても、こんな長い爪をつけていたらかなり不自由ですよね。でも、指甲套が銀製の場合、毒物検査に使うことができるという利点もあります。
たとえば、中国の宮廷ドラマでは、側室が料理やお茶に指甲套の先を付けたり、火鉢の炭の中の燃えカスに水銀がないかを指甲套でかき分けていたりするシーンがあります。
なるほど、そういう使い方もあるのか!と妙に納得してしまいました。
現代では、あまり実用的とは言えない指甲套ですが、贅を尽くした細工技術にはうっとり。紫禁城での宮廷生活に思いを馳せる自分がいます。
欧米のアンティークギャラリーのサイトでも紹介されていて、コレクターの中にもファンがいるようです。
トップ画像出典:newhanfu.com
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