No.200 近未来、人工知能(AI)がダイヤモンド鑑定士に取って代わる?
BJI ブログ No.200
ダイヤモンドの価値を決めるグレーディング(鑑定)。
鑑定機関には、GIA(アメリカ宝石学会)スイスのギュベリン、イギリスのFGA、日本ではCGL(中央宝石研究所)、AGT(AGTジェムラボラトリー)などがあります。
品質基準である4つのC(カット、カラー、カラット、クラリティ)について、それぞれの鑑定機関が独自の様式の鑑定書を用いてダイヤモンドの品質を保証しています。
ただ、ダイヤモンドのグレーディングに、絶対的なものはありません。鑑定機関や鑑定士の判断にゆだねられる点が大きいのです。
たとえば、同じ石でも鑑定士のその日の体調によってグレードが変わったり、鑑定機関によって同じ石に異なるグレードが与えられることもあります。場合によっては、同じ鑑定機関が再提出時に異なる評価を与えることがあったりします。
実際、2023年2月17日カナダのテレビ局CBCが秘密裏に調査を行った際に、同じダイヤモンドリングの鑑定について研究所間に不一致があったことがオンエアされ、反響がありました。宝石業界では1段階の違いが発生した場合でも、許容されます。しかし、顧客にとっては信用問題となります。
そこで、登場してきたのが人工知能(AI)です。実際、 2020年8月、GIAはAIを利用してダイヤモンドのクラリティに関する鑑定を行っていると発表しました。
GIAは、約5年間AI支援のグレーディングに取り組んできており、この研究分野の進歩と活動はここ2、3年で急速に加速しているとのことです。
GIAのエグゼクティブバイスプレジデント兼チーフラボラトリおよびリサーチオフィサーであるトム・モーゼス氏は、
「2020年の段階でAIを利用したダイヤモンドグレーディングの精度は、経験豊富なグレーダーと比較して約90%です。より高い精度と再現性を実現するために、スマートソフトウェアの改良を推し進めます。AIの精度は、データの質と量に左右されます。GIAの強みは、4Cと国際ダイヤモンド グレーディング システムを作ったこと。IBMと協力して、精度がアルゴリズムに確実に組み込まれるようにすることが今の課題です」と述べています。
2022年には、当ブログNo.163でも取り上げた鑑定書のデジタル化へと進んでいます。となると、AIが人間のダイヤモンドの鑑定士に完全に取って代わる時代が来るのでしょうか?
国際宝石学会(IGI)のCEOであるローランド・ローリー氏は、それを否定しています。
「カラーについての鑑定は期待できると思いますが、まだ多くの課題が残されています。たとえば、特定の色合いについては、まだサンプルが十分ではありません。多くの場合に役立つと信じていますが、最終的には人間の判断が必要になると思います」と述慎重派。
一方、AIを推進するサリンテクノロジー社のCEO、デヴィッド・ブロック氏は、
「採掘現場や工場での原石の高度な評価に、 AIテクノロジーを使用できるようになるのはそう遠くないでしょう。小売店は、デスクトップの AI グレーディング システムを使用して、店主が顧客に販売したいダイヤモンドの品質の特定の範囲を識別することができるようになります。たとえば、同じ石を常に同じ方法でグレーディングするということです。手作業の場合、鑑定者からその正確さを確認し、その不一致を解消するには時間がかかります」とAIポジティブ論を述べています。
また、GIAトム・モーゼス氏も
「消費者にとって、AI はより多くのダイヤモンドをより迅速かつ効率的に鑑定するのに役立ちます。AIダイヤモンド グレーディング システムがダイヤモンド製造施設に設置され、カリフォルニア、またはニューヨークの GIA ジェモロジストがリアルタイムでスクリーニングテストを行うことなんてことも不可能ではなくなるのではないでしょうか」
今日の技術では、色、蛍光、透明度、カットグレード、対称性を一貫した方法でグレーディングすることができます。 近い将来、磨きの質、色合い、乳白色などが判別できるようになるとか。
AIが進化し続けることにより、車の自動運転が現実化していく中、宝石鑑定はどのような変遷を遂げていくことになるのでしょうか。
トップ画像出典:southernjewelrynews.com/
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