ハイクラスの御用達 スポーティングジュエリー
HUNTING ( 狩猟 )
王侯貴族を中心とする人々がこよなく愛した伝統的なスポーツ
狩猟は中世以降のイギリスで特権階級の人々によって行われてきましたが現在では動物愛護運動が盛んになり、「人間と自然・動物との共存」という観点からこの種のスポーツは消滅しつつあります。
ハンティングの手順はこうです。まず王侯貴族が馬に乗り、所定の場所に到着。するとラッパを鳴らし同時に猟犬が放たれます。猟犬は役割によって種類が異なります。
キツネ狩りやウサギ狩りにはハウンドやテリアが、キジや雷鳥などの鳥猟には獲物を探し、所在を知らせてくれるポインターやセッター、射撃により落ちた獲物を回収するリトリバーなどが活躍しました。
こうして見てみるとそれぞれの犬には犬種ごとの才能があることが分かります。
優秀な猟犬や、シーズン中に獲れた獲物は身に着けるジュエリーとして相応しいモチーフだったのではないでしょうか。
上から、鴨をくわえた犬。1900年頃、仏、カルティエ社製。ゴールド、ルビー、エメラルド。/毛並みまで表現されたウサギとキツネ。19世紀後期。英、ゴールド。/犬と乗馬用具。1900年ごろ、仏、プラチナ・ゴールド。/ラッパと幸運を示す蹄鉄。1890年頃、英。ゴールド、パール/オールドカットのダイヤがセットされた雷鳥。19世紀後期、英。ゴールド・シルバー・ダイヤモンド・ルビー/猟犬を描いたリバースインタリオ。19世紀後期、英。ゴールド、ロッククリスタル。繊細な細工の飛び立つキジ。19世紀後期、英。プラチナ・ゴールド・エナメル。
HORSE RACE (競馬)
イギリスの歴代王室に保護された長い歴史のある馬のスポーツ
ヨーロッパでは今でも街中で馬を見かけることがしばしばあります。そのように現代に至るまでの長い間、馬は人間の生活や文化と密接に関わっている動物だといえるでしょう。馬にまつわるスポーツは、乗馬、競馬、馬術、ポロなどさまざまです。歴史をさかのぼると、中世の騎士道にたどりつきます。騎士は、貴族の出身であることに加え、馬術や馬上での戦いに長けていなければなりませんでした。なかでも競馬は、イギリスにもたらされたのが紀元210年とされていますから、大変長い歴史があります。その後に貴族たちのスポーツとして盛んに行われ、歴代王室の保護のもと競馬場が作られて定期的に競馬が開催されるようになりました。ジュエリーのモチーフとしては、馬以外に、ジョッキーのキャップ、鞭、幸運を招くとされる蹄鉄などが好んで用いられています。
上から、蹄鉄と鞭をデザインしたブレスレット1880年頃、英、ゴールド、ダイヤモンド・オパール/馬の顔をリヴァースインタリオで写実的に描いた作品2点。これは、カボションカットしたロッククリスタルの底面から彫りを施し逆筆で彩色することで立体的な図柄を作り上げる技法。スティックピン19世紀後期、英、ゴールド・ロッククリスタル/ブローチ19世紀後期、英、ゴールド・ロッククリスタル。
GOLF & CRICKET (ゴルフとクリケット)
似ているようで全然違う2つのスポーツはイギリスが起源
スコットランドが起源とも言われるゴルフ。イギリスでは、「ゴルファーはお行儀が第一」ということわざがあるそうです。なるほど、紳士のスポーツと言われる所以です。しかし男性だけのスポーツではありませんでした。1893年には第一回全英レディース・ゴルフ選手権が開催され、女性が窮屈な服装から解放されてのびのびとプレーを楽しんでいる記録が残っています。日本人にとってクリケットはあまり馴染みがありませんが、こちらもやはりジェントルマンのスポーツ。「クリケット」の一語でフェアプレイやグッド・スポーツマンシップを表すそうです。バットとボールを使うチームゲームですが、個人の能力に試合の行方が左右されます。優秀な選手を応援するというパトロネージュ意識を刺激された貴族階級がクリケットに興味を示したのは当然のことでした。
上から、バッグに入った3本のゴルフクラブはそれぞれが動く作りになっている。チェーンに通してペンダントとして使えるチャーム1900年頃、英、ゴールド。/ゴルフ倶楽部の会員に配られたものか。エンブレムのエナメルが美しい。20世紀初期、仏。ゴールド・エナメル。/クリケットのバットをモチーフにした非常に珍しいスコティッシュブローチ19世紀後期、英。シルバー・めのう。
YACHT & SAILBOAT (ヨット)
ヴィクトリア女王も夢中になった優雅で豪華な貴族の遊び
ヨットとは、商業、軍事用のものではなく娯楽、スポーツ、旅行、などの目的で使用された船舶のことです。語源は「狩猟」とか「追跡する」という意味のオランダ語からきているという説があります。19世紀初めには貴族たちによってロンドンにヨットクラブが結成されました。その後には、かのヴィクトリア女王もヨットに関心を示し、蒸気機関で走るスチームヨットを進水させ、フランスのフィリップ王やベルギーのレオポルド王を訪問したという記録があります。ロシア皇帝やドイツ皇帝も互いに競争して所有し、まさにヨットはステータスシンボルとなっていきました。こうした盛り上がりを受けて作られたジュエリーは船をかたどったものの他に、会場で船同士が通信するのに使う国際信号旗のデザインもあり、ブレスレットやブローチとして人々に愛用されました。
上から、船体は一石のダイヤがセットされ、優雅な航海の様子が伝わります。1880年頃、仏。ゴールド・シルバー・ダイヤモンド・ルビー・サファイア・エメラルド。/シンプルで男性の胸元に似合うスティックピン。1890年頃、英、ゴールド・ロッククリスタル。/帆の部分にオールドカットのダイヤが一個ずつセットされた珍しいブローチ。1910年頃、英、プラチナ、ダイヤモンド。
FISHING ( 釣り)
聖書の教えとも結びつきが深い
ヨーロッパ社会と切っても切れない関係があるのが、キリスト教です。新約聖書において魚はイエス・キリストを示すことでも知られています。それは、魚というギリシャ語が「イエス・キリスト、神の子、救い主」の頭文字を集めた文字で成り立っているところからきています。面白いことに中世において釣りの技術が受け継がれ、発達していったのは修道院、とくに尼僧院でした。釣りがどれだけ優れたスポーツかを説明し、釣りの方法から、継ぎ竿や毛針の作り方まで紹介された本があったほどです。ジュエリーに見られる魚のモチーフには、ゲームフィッシングとして釣るサケやマスなどが使われています。イギリスの古いクリスマスカードなどには川のある田園風景が描かれ、男性が静かに釣り糸を垂らしている姿には独特の情緒を感じます。
19世紀後半に流行したフィッシングモチーフは人気があり、現代でも作られています。上から魚と釣り竿。リールについている小粒のパールがポイントのブローチ。20世紀中頃、英。ゴールド・パール・エナメル。/魚をポイントにして胸元や帽子につければ女性でもおしゃれに楽しめるスティックピン。1970年頃、英、ゴールド、エナメル。/実物の毛鉤を入れてペンダントトップに仕上げたユニークなもの。1970年頃、英、ゴールド。
TOP画像 : エナメルとカラーストーンで飾られた羽ばたく「ハミングバード」のブローチは、写真のマーガレット王女が胸につけているもの。貴族の社交場でもあったレース場では、ドレスアップにジュエリーは欠かせないものだった。1950年頃、英、Collongwood社製。ゴールド・ルビー・シトリン・エナメル
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19世紀 アンティークゴールド&天然真珠ブローチ。中央の馬蹄モチーフは、ヨーロッパでは幸運をもたらすものとして今でも愛されているシンボルです。ゴールドのバーは厚みがあるので歪みもなく、パールを1粒ずつしっかり包み込んでいます。ショップはこちら。¥69,300(税込)