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エキゾティックジュエリーの系譜、ショーメ

ショーメもまた、インドから多くの影響を受けたジュエラー。インドスタイルを洗練させて、新しいエレガンスを誕生させました。

Text=Takahashi Yoshiko / Watanabe Ikuko


 1780年の創業以来、ナポレオンをはじめとする王侯貴族のために華麗で品格あるジュエリーを作り続けてきたショーメ。特に、各国の王室のために制作したティアラの数々は有名です。
 そんなショーメはあくまで西洋のイメージで、インドのようなエキゾティックな国との結びつきをあまり想像できないかも知れません。しかし、1910年から30年の20年間はショーメにとっても、インドのスタイルの時代でした。
 20世紀初頭、インドのマハラジャ達がヨーロッパを頻繁に訪れるようになり、ヨーロッパスタイルを愛好し始めます。彼らはつねに宝石で身を飾っていましたが、儀式やパレードでは、ターバンに冠やエイグレットをつけ、首に何連にもなったネックレス、さらにイヤリング、指輪と、全身を宝石で飾りました。彼らは大の宝石好きだったのと同時に、宝石は政治的権力を示すシンボルでもあったのです。マハラジャ達は、ヴァンドーム広場のショーメのブティックに保有する宝石を持ち込み、プラチナ製の軽くしなやかな台座に取り付けさせました。そして、ヨーロッパ風に洗練されて生まれ変わったジュエリーを祖国に帰って自慢したのでした。
 ショーメを贔屓にしたマハラジャは数多くいましたが、中でもインドール藩王国を統治する、ホルカー一族との関係は深いものでした。19世紀末、ヤシュウォン・ラオ・ホルカーは大きな勢力を持つマハラジャの一人でしたが、1911年にジョゼフ・ショーメから、世界的に有名な2個のペアシェイプカットのダイヤモンド「インドール ペアズ ダイヤモンド」を購入しています。このダイヤモンドは各46カラットという大変大きなものです。インドール藩王国の繁栄は20世紀半ばまで続き、代々のマハラジャはショーメに宝飾品の制作を依頼しています。そのオーダーの中には、ソートワールのネックレスや宝石を散りばめた剣、女性のためのサリー用のコサージュオーナメントなどがありました。
 こうした関わりの中で、ショーメもインドの影響を大きく受けます。19世紀末からエイグレットが多く制作されますが、これはもともとインドの装飾品です。それにヨーロッパのテイストを加えてアレンジしたものが、ティアラではフォーマル過ぎる公式の場でつける髪飾りとして流行したのです。同じくインド由来のタッセルをモチーフにしたジュエリーも多数制作されています。
 現在のショーメのジュエリーを見ても、インド風を感じるものがあります。色石の組み合わせやデザインがエキゾティックなのです。もちろんどれも洗練を極めていて、強くインド風を主張しているようなものはありません。しかし、エキゾティシズムを感じさせるショーメのジュエリーに接した時、20世紀初めのインドのマハラジャとの深い関わりに思いを馳せずにはいられません。たくさんの宝石を携えて、豪奢な衣服を着たマハラジャがパリのショーメブティックを訪れる……。それは、なんと贅沢で面白い時代だったことでしょう。

左/ソートワールのデザイン画。ジョゼフ・ショーメ作。1920年頃。ショーメ・パリ コレクション。右/ソートワールネックレス「パヤデール」。ジョゼフ・ショーメ作。1920年頃。ショーメ・パリ コレクション。パヤデールとはヒンドゥーの踊り子がつけている房付きのチェーンに由来している。

左/ショーメのサヴォワール・ウェール(職人技)を示すハイジュエリーコレクション「ドゥーズ ヴァンドーム」のソートワール。右/パリ・ヴァンドーム広場のショーメのブティック。ここにたくさんのマハラジャが訪れた。

Brand Jewelry 2014 S-Aより抜粋

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