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神秘と欲望と愛に彩られたジュエリーに巡りあう旅#2

Text = Horie Ruriko
Jewelry=Victoria and Albert Museum
William and Judis Bollinger Jewellery Gallery

日本以外の国ではジュエリーが古くから生活の中に溶け込んでいる。旅の中でジュエリーを発見するのを生き甲斐としている堀江瑠璃子さんの異色の旅行記。

堀江瑠璃子 (Horie Ruriko)
ジャーナリスト。元朝日新聞編集委員・NHK番組審議委員、『マリー・クレール』エディトリアルディレクターなどを経てフリーランス。著書に『世界のスターデザイナー43』など。


INDIA(インド)—上流も下流もジュエリーは、必需品?!

 ロンドン塔に飾られているエリザベス2世の王冠に燦然と輝く109カラットのダイヤモンド「コ・イ・ヌール」。インドの言葉では「光の山」を意味するこのダイヤモンドは、5千年前にインドで発見され、最初は1000カラットもあったといわれるが、より美しい輝きを求めてカットを加えていく中に小さくなり、持ち主もインド人からペルシャ人、イギリス人へと移り変わり、1851年のロンドン万博に出品されたときには、186カラットになっていたという。

 いずれにせよインドは、昔からダイヤモンドを始めいわゆるジェム・ストーンの産出量が多く富裕層から貧しい人まで、階層には関係なく宝石類が結婚の結納品、安産祈念、魔除け、幸運を呼ぶパワーストーンなどとして用いられてきた。加えていまでも、身につけている宝石を見れば、身分や社会的地位までわかるという人もいる。

 2009年12月に「魅惑のインド周遊と宮殿ホテル11日間」(ユーラシア旅行社)に参加するとき、インド・ジュエリー事情を探索しようという期待度は、かなり高かった。とはいえ、ツアーの日程が充実しているため、ゲリラ的に自由行動の時間を作って、宝石店へ行ってもみたり、イタリアのジュエリー・フェア「ヴィチェンツァ・オロ」の取材で顔見知りの宝飾雑誌の編集長を訪ねてみたりなどと、秘かに計画を練っていた。しかし、首都デリーからガンジス川河畔のベナレスへと旅する間に、私の視点が変わり始めた。というのは、観光客と見れば「マネー」と言って手を出すようなおばさんでも、大きな金のイヤリング、木の実のネックレス、エナメルに花柄のバングルなどをサリーの色や柄に合わせてつけている。また宮殿ホテルのロビーで見かけた若いサリー美人は、母親譲りのものだろうか、英国ヴィクトリア調の影響を受けて創られた金細工のロングネックレスを胸元に揺らせていた。タージマハルに西部のグジャラードからお参りにきた若い女性は、ピンクサファイアとパールを使った髪飾りをつけていた。ジャイプール付近の村の農家の若い母親は、私たちの突然の訪問にもかかわらずグリーンのサリーによく似合うネックレスやバングルをつけていた。

 なるほど!インドの女性たちは、階級制度や年齢に関係なく日常的にジュエリーのある暮らしを楽しんでいるのだった。

 ピンクシティと呼ばれるジャイプールの宝石店に入って、さらになるほど!と納得したのは、文字通り玉石混淆。ハイジュエリーから木の実を繋いだアクセサリーまで物量の多いこと! 客層もさまざま。これぞインドという情景だった。

1850年頃。エナメル、ゴールド、ダイヤモンド、パールを用いたインドのネックレス。裏側はエナメルで花、葉の模様が描かれている。

デラックスダイヤモンド』より抜粋 *当サイトの情報を転載、複製、改変等は禁止します

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