BJI ブログ No.183

昔から人々を魅了してやまないダイヤモンド。

何世紀にもわたり賞賛されてきた見事な美しさを誇るダイヤモンドは、さまざまな伝説を生み出してきました。中でも有名なのが、当サイト2022年8月17日付のストーリーの記事でも紹介した「ホープダイヤモンド」でしょう。

そして最近、注目されているのが「Idol’s Eye（アイドルズアイ）」と呼ばれる三角形のブリリアントカットのブルーダイヤモンド。サイズは70.21カラット、推定1,000 万ドル（約13億円）相当と言われるこのダイヤモンドもまたさまざまな伝説を生み出してきました。そして今新たな話題を提供しています。

カタール王室のメンバーが、この大粒ブルーダイヤモンドの所有権をめぐってロンドンの高等裁判所で争っているのです。

現在、アイドルズアイは、故シェイク・サウード・ビン・モハメッド・アール・サーニの相続人によって運営されているElanus Holdings Limited(エラナス・ホールディングス・リミテッド)の管理のもとにあります。

英国の経済紙『フィナンシャルタイムズ』によると、カタールの美術蒐集家でシェイク・サウードと同族のシェイク・ハマド・ビン・アブドゥラ・アール・サーニが経営する複合企業Qipco（キプコ）が、エラナスを相手取って訴訟を起こしているのです。

シェイク・サウードは、2000年代に世界のアート市場における最大のバイヤーの1人であり、数年間並外れたコレクションで人気を博していました。彼の遺産は、その膨大なコレクションが展示されているドーハの博物館やウェストベイにあるジャン・ヌーベルが設計したドーハ タワーで見ることができます。

一方、元首相の息子で、タミム・ビン・ハマド・アル・サーニ首長の1番目のいとこであるキプコの代表、シェイク・ハマドは、カタールで傑出したコレクターとして最近頭角を現している人物。最高級のムガル帝国のジュエリーを含む大規模なコレクションを集めていると言われ、彼のコレクションは世界の主要な美術館でも展示されています。

2014年の両当事者間で締結された契約によると、エラナスは20年間貸与という形でアイドルズアイをセッティングした16～17世紀のネックレスをキプコに提供することになっていました。さらにエラナスが宝石を売却したい場合、キプコは宝石を購入する権利が与えられることで合意していました。価格は1000万ドル、または２つの主要なオークションハウスの評価額の平均のいずれか高いほうの額で購入するという内容でした。

今回の訴訟は、2020年2月スイスに本拠を置くアル・サーニ財団の弁護士であるディーター・ノイパートが、相続人に宝石を売却する意志があることをキプコに通知しましたが、その数カ月後これを撤回する電子メールを送ったことが発端となっています。

さらに、その後ノイパートがキプコに送った電子メールには「コロナウイルスのため、家族は売却を望んでいません」と書かれていたとのこと。そこで「話が違う」とキプコからの訴訟が提起され、イギリスのロンドンで裁判になったというわけです。

ところで、アイドルズアイとはどんなダイヤモンドなのでしょう。

その出自については不明ですが、1600年代にインドのゴルゴンダ鉱山で採掘されたと言われています。そして、最初に文献に登場したのが1865年7月にロンドンのクリスティーズのオークション。単に「BB」と名乗る謎のバイヤーによって落札され、第34代オスマン帝国スルタン、アブドゥル・ハミド２世 (1842-1918) が所有していたと言われています。1906年にパリで再びオークションにかけられ、第二次世界大戦後の1946年には、ハリー・ウインストンが所有、さらに何人もの所有者を経て、1979年にはロンドンの宝石商グラフが購入しました。1983年1月、グラフはアイドルズアイを39.55カラットのクッションカットダイヤモンド「エンペラー・マクシミリアン」と、70.54カラットのイエローダイヤモンド「スルタン・アブドゥル・ハミド2世」と一緒に、同じ買い手（シェイク・サウードなのでしょうか？？）に売却。これまで知られている中で最も高額な取引の1つと考えられています。

また新たな逸話が誕生させたアイドルズアイ。その結末はどうなるのか……気になるところです。

Top画像出典 :famousdiamonds.tripod.com

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