Written by Machida Akemi

赤いバラが浮遊する椅子や建築用のエキスパンドメタルを使用した椅子など、20世紀のインテリアデザイン史に残る名作が間近で観られるチャンス！

忙しい毎日にほっと一息、オフの日は展覧会に出かけませんか？　ちょっと変わった面白いデザインが好き、そんな方におすすめなのが、倉俣史朗の展覧会です。

「倉俣史朗のデザイン―記憶のなかの小宇宙」が、2023年11月18日(土)～2024年1月28日(日)まで、緑豊かな東京・砧公園の一角に位置する世田谷美術館にて開催されます。

日本よりもヨーロッパでの評価が高かった

デザインに携わっている方なら倉俣史朗という名前を知っていると思いますが、若い世代では知らないという人もいるでしょう。倉俣史朗は、1960年代以降の空間デザイン、家具デザインなどで世界的に高い評価を受けたデザイナーです。アクリル、ガラス、建材用のアルミなど、従来の家具やインテリアデザインに用いられなかった工業素材に、独自の詩情を乗せた仕事は世界的な注目を集めました。

1981年にはミラノのデザイン集団「メンフィス」に参加。のちにフランス文化省芸術文化勲章を受章し、その独創的なデザインに対し「クラマタ・ショック」という言葉まで生まれました。

高度経済成長期からバブル時代を駆け抜けた倉俣史朗。1991年、56歳という若さで突然この世を去りますが、死後も比類なき独創的なデザインは多くのデザイナーに影響を与え続けています。

アクリルに赤いバラの花を閉じ込めた椅子《ミス・ブランチ》

没後30年を超えた今回の回顧展では、今まであまり公開されてこなかった資料も含め、倉俣史朗の業績を振り返ります。

代表作は、透明なアクリルの椅子に造花のバラの花を閉じ込めた《ミス・ブランチ》。バラは手作業で1つ1つピンセットで固定し、アクリルには気泡が入らないように作られています。椅子の名前は、映画『欲望という名の電車』でヴィヴィアン・リー演じる未亡人ブランチからきているようです。世界で56脚しか存在しないと言われているので、この機会にぜひ実物を観てみたいですね。

倉俣史朗　ショップ「スパイラル」　1990年　撮影：淺川敏　© Kuramata Design Office

従来の家具には用いられなかった素材を使用

数々の名作をこの世に残した倉俣史朗。建築現場で使われるエキスパンドメタルで作られた椅子《ハウ・ハイ・ザ・ムーン》も有名です。素材は金属ですが軽やかさも感じられるこの椅子は、欧米各国の美術館にも所蔵されています。

また、2021年には倉俣史朗が内装を手掛けた新橋のすし店「きよ友」が、香港の美術館M＋に、まるごと移設されたこともニュースになりました。本展では、倉俣史朗の世界的評価を再確認できるいい機会となるでしょう。

革新的なデザインで世界中の人々を驚かせた倉俣史朗。何を考えながらデザインしていたのか気になりますね。本展では、デザインという形にはならずに断片的に書き留められたままのスケッチや夢日記も紹介。倉俣自身の言葉も多数紹介することで、創作の源泉と秘密に迫ります。

鑑賞後は館内のカフェやレストランで、倉俣史朗の作品の余韻に浸りながらゆったりとしたひとときを。広々とした砧公園の散策とセットで訪れるのもおすすめです。

Top画像：
左上 : 倉俣史朗《引出しの家具》1967年　富山県美術館蔵© Kuramata Design Office
左下: 倉俣史朗《ハウ・ハイ・ザ・ムーン》1976年　富山県美術館蔵　撮影：柳原良平　© Kuramata Design Office
右上 : 倉俣史朗《アクリルスツール（羽根入り）》1990年　京都国立近代美術館蔵© Kuramata Design Office
右下 : 倉俣史朗《ミス・ブランチ》1988年　富山県美術館蔵　撮影：柳原良平　© Kuramata Design Office

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倉俣史朗のデザイン―記憶のなかの小宇宙
The Work of Shiro KURAMATA:A Microcosmos of Memory

会期：2023年11月18日(土)～2024年1月28日(日)
開館時間：10:00～18:00（入場は17:30まで）
休館日：毎週月曜日、12月29日(金)～1月3日(水)　※1月8日(月・祝)は開館、翌1月9日(火)は休館
会場:世田谷美術館 1階展示室
住所:東京都世田谷区砧公園1-2
観覧料:　一般:1200円  65歳以上:1000円　大高生:800円　中小生:500円
※未就学児は無料

料金等の詳細は、公式ホームページでご確認ください。
https://www.setagayaartmuseum.or.jp/exhibition/special/detail.php?id=sp00216　　　
お問い合わせ：050-5541-8600（ハローダイヤル）

【巡回情報】
富山県美術館 2024年2月17日～4月7日
京都国立近代美術館 2024年6月11日～8月18日

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