ムサイフ、日本では無名だけど、世界のジュエリー業界では一目置かれる著名なロンドンの宝石店
宝石の価値がわかる人だけに、楽しみのお裾分け。ロンドンで取材したムサイフという高級宝飾店。
Text=Ikuko Watanabe
アリサ・ムサイフという女性の名は日本ではほとんど知られていないが、世界の宝飾業界では有名人だ。80歳を超える年齢にも関わらず現役で、オークションハウスで何十億円とするレアなダイヤモンドを競り落としている。
19世紀半ばに設立された家族経営の宝石店を引き継ぎ、すでに55年以上の歳月が過ぎた。月日と共に彼女のダイヤモンドの鑑識眼は高まり、女性では右に出る者はいない。所有する 「ムサイフ・レッド」と名付けられた、有名な5.11カラットのナチュラルファンシーレッドダイヤモンドは、彼女の宝石商としての実力を象徴している。ロンドンに2店舗、ジュネーブにも店舗を構え、パリにワークショップを置いている。
眩しいほどの宝石の輝きで目が眩む
ロンドンのボンドストリートのサロンを訪ねた。数あるショーケースの中はどれも無色透明のダイヤモンド、ファンシーカラーダイヤモンド、ルビー、サファイア、エメラルドのハイジュエリーでいっぱいである。ムサイフのジュエリーには貴金属が見えない。すべて大きな宝石で埋め尽くしてしまうからだ。
「大きな希少石は、景気の悪いときこそ買うべき。最高の投資よ」とチャンスがあれば巨大な宝石を手に入れる。だが、彼女にはそれを売れる自信があるのだ。でなければ、あれほどの膨大な数のレアストーンを展示することなど不可能だ。
宝石の煌めきしか見えないジュエリーの中で、例外的だが、存在感を放っているメタルのジュエリーがある。それはカラーをほどこしたチタンで花やチョウなどをかたどり、イメージに合わせてダイヤモンドやカラーストーンを、絵を描くように配したもの。華やかなジュエリーはアリサ・ムサイフのデザイナーとしての顔をのぞかせる。
ジュエリー三昧の人生。1粒でも所有することが難しい大粒のファンシーカラーダイヤモンドを手のひらの中で転がせる彼女はラッキーとしか言いようがない。
宝石商として生まれ落ちたアリサ・ムサイフ。ボンドストリートのお店を行く場合は、必ずアポイントを入れて。
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