バチカンやエルミタージュ美術館から学んだ、モザイクの技を現代のジュエリーに発展させる
Written by WATANABE Ikuko
カラフルで精緻なモザイクの中でもさらに細かいマイクロモザイクで作られるシチス(SICIS)の新作ハイジュエリー
日本で知られているのは、コンテンポラリーなデザインのインテリアや家具くらいですが、シチスはミラノのショールームをはじめ、ロンドン、パリ、ニューヨーク、ドバイなど世界の主要都市にブティックを展開するイタリアを代表するマイクロモザイクのブランドです。モザイクと聞いてもピンとこない人もいるかもしれませんが、この技術の起源は古代ヨーロッパに遡り、教会などの建築物の壁画や美術品でよく見られます。素材であるガラスや宝石の角片を1つずつ色や角度も考えながら、壁面に貼っていくテッセラという方法を原点に発展しましたが、外壁の作業では天候に左右されるため、現代はスタジオで制作し、現場に出来上がったものを貼り替える方法が主流になっています。
モザイクジュエリーは1810年頃より登場し、19世紀に数多くが作られ、現代でもアンティークとして市場で見られます。モザイクジュエリーは2種類あります。その1つローマンモザイクはガラス片を使い、もう1つのフローレンスモザイクは大理石や宝石を使っています。どちらも豊な色彩が魅力で、イタリアからヨーロッパ諸国へと広がっていきました。その技術を現代に引継ぎ、新しいデザイン感覚を組み合わせて制作しているのが、イタリア・ラベンナに本社を構えるシチスです。シチスは巨大なビルの外壁から、掌に乗る小さなジュエリーまで、モザイクで美しい造形を描写できる世界でも珍しいモザイクブランドです。
シチスは25年以上かけて、モザイクの技術をバチカン美術館やエルミタージュ美術館などの壁画や数百点の美術品を視察し、今日の技術を実らせました。無数の色が散りばめられたこのリング”Bohemian Dream(ボヘミアン・ドリーム)”は、想像上の花を描いています。花が訴えかけるのは、このリングを身につける人は、夢を広げ、自由に羽ばたけるように心に開放し、感情を表現して欲しいという思いが込められています。デザイン画を元に作られた金属の花弁の土台に、色ガラス、カラーストーン、ゴールドを埋めていきます。途方もない時間をかけて、熟練の技術を持つクラフトマンがすべて手で行っていきます。仕上げにダイヤモンドを中央に配して完成。ファンタジックなハイジュエリーが誕生しました。
取材協力:SICIS