No.35 近世に花開いたボタンの歴史
BJI ブログ No.35
シャネルのサイトをチェックしていたら、2020年5月にシャネルから発表された「マドモアゼル プリヴェ ブトン」が目に留まりました。
ブラックをベースに金糸を織り込んだツイードのカフ部分に、パールやライオン、カメリアの花、ビザンチン モチーフ、マドモアゼルの横顔などシャネルオリジナルのユニークなボタンを開くと、時計の文字盤が現れるというシークレットウォッチです。
そういえば最近ボタンをはめる服ってあまり着ないなあ~、カフスボタンでおしゃれに決めている人ってあまり見ないな~と思っていただけに、ゴージャスなボタンが主役というのが新鮮でした。
ところでボタンって、いつ頃生まれたのでしょう。
なんと、紀元前1450年~1050年頃の骨製のボタンがキプロス島で出土されています。青銅器時代には、現代のリネンのシャツに使われる留め具と同じ仕様の飾り鋲も見つかっています。
ボタンが一般化したのは、1300年頃から服が身体に密着するようなデザインになってからで、ボタンを通すためのボタンホールが生まれたのもこの頃だとか。
16世紀に入ると、金ボタンやシルクの布をかぶせたくるみボタンなどが作られるようになり、その後ダイヤモンドなどの宝石をはめこんだ金、銀、象牙などのボタンが登場。当時は職人の手で作られる1点物でした。
たとえば、フランソワ1世は、王室御用達の宝石商に1万3400個もの金ボタンを作らせて黒ビロードの衣裳に付けていたそう。ヘンリー8世の肖像画には、指輪とそろいのデザインで宝石をセットしたボタンをダブレット(当時の男性用の上着)に付けています。
17世紀に入ると、宝石をセットしたボタンは男性用のジュエリーとしてダブレットはもちろんのことコート、ハンカチ(!)にもついていて、「ボタン付きハンカチーフ」は、チャールズ1世時代のロンドンの最新ファッションだったとか。
その後ボタンの需要はますます増え、19世紀にはイギリスで機械化による大量生産が可能になりました。
同時期、中国は清王朝の時代、ボタンは社会的地位を表す象徴として使われていました。
官吏がかぶっていた帽子の頂についていたボタン、最上位はルビー、続いて7位までサンゴ、サファイア、ラピスラズリ、水晶、白石、金と素材によって階層を区別していたんだそう。
現代では、ボタンはほとんどが実用目的となっていて、さらに日常ではボタンのない、ゆったりとした服が多くなってきたため、出番はますます少なくなりつつあります。
イタリアでご主人がボタン工場を営む知人が、「イタリアでもボタンの需要は減ってきていて、この工場も夫の代で終わりになるなあ」とつぶやいていたことを思い出しました。
何百年もの間、ボタンの目的は実用だったり装飾だったり時代によって用途が違っていました。
今では装飾がメインとなっていますが、歴史は繰り返すといいます。
またいつか実用に戻っていくかもしれませんね。(C)
参考資料:『アクセサリーの歴史事典 下』八坂書房
トップ画像:マドモアゼル プリヴェ ブトン(シャネル)