Text =Takahashi Yoshiko

世界で流通している宝石の多くには人工的な処理が施されています。エメラルドやルビーなどのカラーストーンの色をきれいに出すために人間が手を加えるのはごく一般的です。そんな中、注目されているのが希少な非加熱の宝石です。クリスティーズやサザビーズのオークションなどに登場した「処理していない」ジュエリーをご紹介します。

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究極のピュアな宝石、人気急上昇

宝石の処理にはいろいろな種類がありますが、主に加熱処理、放射線処理、オイル処理、染色などです。現在流通しているルビー、サファイア、アメシスト、ガーネット、トルマリン、パライバトルマリンなどは、ほとんどが加熱処理されています。そして、エメラルドのほとんどは、オイル処理されています。その目的は色をよりきれいに見せるためです。

例えばサファイアの場合、青色のもととなっているのは酸化チタンです。しかし、酸化チタンが固まってしまっていると、きれいな青色は出ません。熱を加えると、酸化チタンが溶けて濃い青色になるので、加熱が必要になのです。エメラルドは内部に亀裂が入りやすい石なので、オイルをしみこませて、亀裂が目立たないようにします。こうした人工的な処理は、石の改良とされています。石を根本から変えるものではないので、処理された石も天然石と見なされています。

同じ人工的処理でも着色剤や染料を使って着色をした石は天然石としては扱われず、鑑別書にも「処理エメラルド」などと書かれ、はっきりと天然石と区別されます。

人工的に手を加えられた宝石が多い中、今一際注目されているのが、人工的な処理がまったく加わっていない純粋に天然の宝石です。世界的に有名なオークションハウスであるクリスティーズやサザビーズでは、もともと天然の石しか扱っていません。一部、処理された石も扱いますが、例外的で一流ブランドのジュエリーで価値があるとされたものや世界的な有名人が所有していたといったストーリー性があるものなどです。また、真珠に関しては、養殖真珠も扱いますが、その場合、「カルチャードパール」という但し書きがあり、天然パールとはっきりと区別されます。

クリスティーズとサザビーズがこの秋、香港で開催したオークションでは処理されていない希少価値のある宝石が多く出品されました。クリスティーズで一番の話題となったのは、香港のオークションに登場したカルティエのルビーとダイヤモンドのブローチ。センターストーンのルビーはミャンマー産で約10カラットあります。さらに、ティファニーの有名なデザインのブローチ2点も注目されました。ひとつは大粒のトルマリン、もうひとつは大粒のシトリンが使われています。他にも、ブルガリのルビーのリングやパパラチアサファイアとダイヤモンドのリングも人気を集めました。

サザビーズのオークションでは、35.72カラットという巨大なエメラルドのリングが予想落札価格の約10倍の3,272万香港ドルで落札されました。これだけの大きさがあるにも関わらず、人工的処理なしで亀裂が入っていないエメラルドは本当に希少なので、高値をつけたのでしょう。17.16カラットのサファイアのリングも、予想落札価格をはるかに上回る3,148万香港ドルで、6.7カラットと6.8カラットのルビーを使ったイヤリングも予想落札価格を上回る2,308万香港ドルで落札されています。

非加熱の宝石は、今ジュエリー界で人気急上昇中と言えます。そして、今後もその希少価値のために、人気は続いていくに違いありません。

右上 : クッションシェイプのシトリンに鳥がのっている、ティファニーの有名なブローチ。デザインはジーン・シュランバーゼー。無処理石に加え、このデザイナーの名が付いていることも意味があります。Christie’s 右下 : ブルガリのルビーのリング。13.85ctのビルマ産ルビーをセンターに、周囲をダイヤモンドが囲む、ゴージャスな逸品です。Christie’s 左上 : スリランカ産の16.75ctのパパラチアサファイアと11.65ctのダイヤモンドを組み合わせたリング。Christie’s 左下 : ティファニーのクッションシェイプのトルマリンを使ったブローチ。トルマリンの鮮やかなグリーンが美しい。周囲をダイヤモンド、イエローダイヤモンド、エメラルドが飾っています。Christie’s

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TOP画像 : 香港のクリスティーズのオークションに出品されたカルティエのルビーとダイヤモンドのクラスターブローチ。センターのルビーは貴重なミャンマー産のピジョンブラッドルビー、クッションシェイプ、10.18ct。Cartier Paris, 1911。

Brand Jewelry より抜粋

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