ブシュロンのハイジュエリーは、王侯貴族たちのオートクチュールのシンボルからインスパイア
Text=Machida Akemi
リボン、勲章、ボタン、刺繍など、オートクチュールに欠かせない装飾品に、現代的な解釈を加えたハイジュエリー。
一瞬で夢のような世界に連れて行ってくれるハイジュエリー。ブシュロンから王侯貴族たちがセレモニーで纏ったコスチュームである礼服からインスピレーションを得た、新作ハイジュエリー「The Power of Couture(パワー オブ クチュール)」が発表されました。
ブシュロンでは、毎年1月と7月に、異なるコンセプトのハイジュエリーコレクションを発表していますが、1月に発表される「ヒストリー オブ スタイル」コレクションはメゾンが辿ってきた歴史や、ヘリテイジ作品より発想を得たもの。
「The Power of Couture (パワー オブ クチュール)」は、礼服という伝統的なスタイルに現代的な解釈を加え、そのコードとシンボルである勲章、ボタン、刺繍、飾緒といった装飾品をハイジュエリーで表現した24作品。装いに合わせて自在に形を変え、何通りもの方法で身に着けることができるのも魅力です。
オートクチュールはデザインインスピレーションの1つ
制作チームを指揮するのは、ブシュロンのクリエイティブディレクターであるクレール・ショワンヌ。デザインするにあたり、創業者フレデリック・ブシュロンのデザインのルーツでもあるオートクチュールのアイデアに立ち返りました。
創業者の父親、ルイ・ブシュロンは1817年よりパリで織物商を営んでいたという歴史があります。高級素材であったシルク、さらにレースを扱うようになり、事業を拡大。こうした環境がフレデリック・ブシュロンのジュエリー制作に影響を与えます。
「私たちのメゾンのアーカイブには、ノット(結び目)、ヴェルヴェット、グログラン、ポンポン、レースのアイデアを取り入れたジュエリー作品が数多く存在します。このコレクションでは、権力やパワーのシンボルである特別なコスチュームである礼服を解体し、再構築することによって新たなスタイルを提案しました」とクレール・ショワンヌは述べています。
硬質なストーンでシルクのような風合いを表現
従来のハイジュエリーにある華やかな色使いとは異なり、カラーの統一感を重視。ダイヤモンド、ロッククリスタル、ホワイトゴールドと素材を透明とホワイトに限定しています。硬質な素材を用いながら、シルクの織物のように洗練されたしなやかさを表すのはとても困難なこと。それを可能にしたのは、ブシュロンの高度な技術を持つ職人たちです。
例えば、クチュールに欠かせない要素であるリボンでは、艶を消したマットなロッククリスタルとダイヤモンドを組み合わせ、グログランのしなやかな布地の風合いを表現。ネックレスに使用した435個のロッククリスタルのパーツは、職人がひとつひとつ手作業でカットや艶消しを施し、極細のホワイトゴールドのフレームに嵌め込んでいます。
制作時間に2600時間を費やしたといいます。中央に輝きを添えているのは、ペアシェイプの4.05カラットのダイヤモンド。リボンの一部をブレスレットやブローチ、肩飾りやリングとして6通りの方法で着用できます。
Brand Story ~ 独創的な発想と職人技の結晶
ブシュロンは1858年創業、1893年にパリのヴァンドーム広場にハイジュエラーとしては初めて店を構えたブランドです。160年以上の伝統と職人の技術を継承しつつ、植物や動物モチーフなど大胆かつ華麗なスタイルで魅了します。宝石を輝かせる自然光が窓から降り注ぐヴァンドーム広場26番地のブティックの上階にあるアトリエで、現在も全てのジュエリーが制作されています。
2015年から2人の女性がトップに就任。ブシュロンCEOのエレーヌ・プリ=デュケンと、クリエイティブディレクターのクレール・ショワンヌがリーダーシップをとり、他のブランドにはない独自性を発揮しています。
ジュエリーと環境問題は切り離せませんが、ブシュロンは、2025年までに主要原材料(ジュエリーの主原料であるゴールド、プラチナ、ダイヤモンド、カラーストーンなど)の産地から原石、そして最終的に石留めされるまでのトレーサビリティを100%にすることを目標に掲げています。
TOP画像:左/2024年ハイジュエリーコレクション 「The Power of Couture(パワー オブ クチュール)」ブトン(ボタン)、ヌー(リボン)、メダイユ(勲章)、エギレット(飾緒) BOUCHERON 右/2024年ハイジュエリーコレクション 「The Power of Couture(パワー オブ クチュール)」ブトン(ボタン)、ヌー(リボン)、ブロデリー(刺繍) BOUCHERON