ニナ リッチ(Nina Ricci)の2020秋冬ジュエリーコレクション。冬の海岸をテーマにしたカラーストーンやベビーパールが印象的
Written by MACHIDA Akemi
モードとリンクするニナ リッチのジュエリー。シーズンごとにパリで打ち出されるファッションのコンセプトがデザインの隅々に生かされている。
オートクチュール時代のパリのエレガンスが感じられるニナ リッチジュエリーの2020年秋冬コレクションのテーマは、冬の海岸という意味の「プラージュ ディヴェール(PLAGE D’HIVER)」。遠くに見える水平線、砂浜には新鮮な風が吹き抜け、見上げると雲が流れるように飛んでいく、そんな冬の海岸に降り注ぐ柔らかな光をさまざな形で表現したポエティックなコレクションです。
アプリコットオレンジのシトリン、濃いブルーのロンドンブルートパーズ、そしてオリーブグリーンのペリドットと、3つのカラーストーンが瑞々しく輝くリングとネックレスは、ダークな色が中心の秋冬のファッションの差し色になります。あまり見たことがないオレンジ、ブルー、グリーンという色の組み合わせが新鮮。胸元、手元の女性の肌を美しく見せてくれます。
紫と黄色、1つの石の中に、アメシストとシトリンの2色が存在するアメトリンはさまざまな角度から何度も眺めてしまうほど美しいバイカラーです。紫が女性のエネルギー、黄色は男性のエネルギーを持つと言われ、身につけるとバランスのいい状態で過ごせるとか。
ニナ リッチは、イタリア出身のデザイナー、マリア・ニナ・リッチが1932年、パリのキャプシーヌ通りにショップをオープンしたのが始まりです。10代の頃からお針子として働いていた彼女は、机の上で線を引いたりせず、顧客の体に直接生地をあててカットしたり、ドレープやギャザーを作ったりといった彫刻的な技法で人々を驚かせ、たちまち話題となりました。マダム ニナ・リッチの作るドレスは当時の貴婦人や映画女優たちをうっとりさせ、注文が殺到しました。
マダム ニナ・リッチがパリで店を持った1930年代は、世界恐慌が広まり、パリの多くのクチュリエの店をぐらつかせました。また、ヨーロッパ大陸は戦争を予感させるような不穏な空気に満ちていたのですが、マダム ニナ・リッチは、どんな時も女性は気品高く美しくあってほしいという想いを曲げず、女性らしいタッチのドレスを作り続けました。不景気で気持ちまで暗くなるような時代でしたが、パリ中のエレガントな女性たちは、フェミニンなニナ リッチのドレスを身に着けたがったといいます。
現在ニナ リッチのファッションは、クリエイティブディレクターにルシェミー・ボッターとリジー・ヘレブラーが着任し、マダム ニナ・リッチのアーカイブを現代的に解釈した活動的なドレープやギャザーが効いた服、シェイプがきれいな帽子などを発表し注目を集めています。ニナ リッチジュエリーは、シーズンごとに発表されるファッションからインスパイアされて作られています。
冬の静かな海に白いさざ波が立つ様子を、ダイヤモンドとゴールドで表現したジュエリーもエレガントです。波打ち際で行きつ戻りつしながらキラキラと輝くさざ波をドレープのようにデザインしています。ドレープは、ニナ リッチのオートクチュール時代から好んで使われている伝統的な手法ですが、優美で柔らかな表情が魅力です。
ベビーパールで白波をデザインしたジュエリーは、波がくだけて一面に白い泡が生じ、その白波が飛び散ったり、風に吹かれたりといった情景を思い起こさせます。繊細な輝きを放つベビーパールが、大人の可愛らしさを引き出してくれます。女性を美しく輝かせるシェイプにこだわり、質のいい素材だけを使い、丁寧に仕上げるという1930年代から続いているマダム ニナ・リッチの想いが、現在のニナ リッチジュエリーにも生きています。
*価格はすべて税込。
お問い合わせ先:エスジェイ ジュエリー株式会社
https://www.sjj.co.jp/ninaricci/
TEL 03-3847-9903
*トップ画像:ボリューム感のあるアメトリンのネックレスとリング。ネオ テーラリング(新しい仕立て) K18YG・アメトリン(4ct前後) ネックレス。 ¥222,200円リング。¥306,900円 NINA RICCI