No.31 救世主はナマズ?! 琵琶湖産真珠、復活なるか?
BJI ブログ No.31
日本で真珠というと、志摩の英虞湾で養殖されるアコヤガイによる「アコヤ真珠」を思い浮かべる方が多いと思いますが、琵琶湖や霞ケ浦ではイケチョウガイによる「淡水真珠」の養殖も行われています。
特に琵琶湖産の淡水真珠は、昭和40年代、その上品な輝きと個性豊かな色、形から国内外で大人気、ビワパール(BIWA)と呼ばれてヨーロッパにも輸出されていました。
しかし、その後水質の悪化や安価な中国産の台頭により生産が低迷、現在に至っています。
その救世主として、今注目されているのがなんと、ナマズ。
2021年3月1日付の『京都日報』によると、昨春から滋賀県水産試験場(彦根市)と真珠養殖業者が協力し、母貝育成に不可欠な寄生魚としてナマズを活用する実証実験に取り組んでいるとのこと。
ところで「寄生魚」って何?
淡水真珠の母貝となるイケチョウガイは成長過程が独特で、4~6月に受精後1カ月ほどで雌貝から放出された約0.3ミリの*幼生(ようせい)が特定の種類の魚のえらなどに約2週間寄生する習性があります。
つまり、幼生が寄生する魚が「寄生魚」で、かつてはニジマスとヨシノボリという魚を使用していたのですが、前者は水温が23度を超えると弱るため4月しか使えない、後者は入手が難しい上に小型魚なので飼育が困難なのです。
そこに浮上してきたのが、以前から養殖業者の中でも評判となっていたナマズです。寄生魚として試験場で5年前から養殖され、昨春初めて6業者に計約千匹を試験的に提供、今春以降も実験が継続中です。
実際、昨春ナマズの提供を受けた真珠養殖業者の中には手応えを感じている人もいるようです。
海水真珠養殖のアコヤガイは、稚貝が真珠の基となる貝の膜や核を入れることができる成貝まで成長するまでに2年、入核から出荷まで1~2年なのに対し、イケチョウガイはそれぞれ3年かかります。海外の輸入品に押され国内の淡水真珠市場が縮小傾向にある中、ナマズがその救世主となってくれるのか、長い目で見守っていきたいものです。
*「幼生」とは、卵から生まれた後「孵化から変態まで」までの時期の状態の動物を指します。虫でいう蝶々における青虫の状態(幼虫)といえばイメージしやすいと思います。(C)