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ジュエリーと、ジュエリーにまつわるさまざまなエピソード

No.79 ニューヨークの若手デザイナー、モーニング(死を悼む)ジュエリーを発表!

BJI ブログ No.79

故人の死を悼むための服装といえば、ブラックフォーマル。その際身に着けるジュエリーは「モーニングジュエリー」と呼ばれ、日本ではパールが一般的です。

モーニングジュエリーは、17世紀英国で始まった「メメント モリ ジュエリー」から派生しています。「メメント モリ」とは、「死を想え」という意味のラテン語の格言。はるか昔の古代ローマ時代、将軍に仕える兵士が勝利の味に溺れることがないよう、戒めのことばとして誕生したと言われています。「メメント モリ ジュエリー」は、故人を偲びその思い出を楽しむジュエリーとして、ブローチやバングル、指輪などに故人の遺髪が埋め込まれています。

戦争や疫病が蔓延していた当時、死は常に身近であり、いつ訪れてもおかしくない存在でした。このジュエリーを身に着けること=常に死を意識し覚悟するという意味合いも含まれていたと思われます。

その後、モーニングジュエリーとして一大ブームを巻き起こしたのが、19世紀。時の英国の女王ビクトリアが最愛の夫、アルバート公を当時流行していた腸チフスで亡くした際、ジェットのジュエリーを身に着け哀悼の意を示したことから、多くの国民も黒いジュエリーを身に着けるようになりました。その流行はやがてはヨーロッパ大陸に渡り、多くの女性が黒いジュエリーを愛用していました。

当時モーニングジュエリーとして使われた素材は、ジェット、オニキス、そして黒いエナメル。ジェットを身に着けることが多かった女王ですが、喪に服した後期の頃は髪の毛で作られたネックレスやブレスレット、ベルリンアイアンと呼ばれるアイアンジュエリー(当ブログNo.51でも紹介)、象牙やべっ甲なども着けていたようです。当時のモーニングジュエリーは、アンティークジュエリーとして今も市場で多く見かけられます。

ここ数年日本でも遺骨や遺髪を使ったジュエリーが注目されるようになり、それを身に着けて日々故人への深い思いを大切にされる方も増えてきました。

そして2019年12月突如出現した新型コロナウイルスによって「人はいつか死ぬ」ということをさらに身をもって知ることになります。このウィルスで大切な人を亡くす方も多く、世界各地の著名人の訃報にも「死」を身近に感じたように思います。

そんな中、新作として現代の女性に向けたモーニングジュエリーを発表したのが、カリフォルニア出身でNYを拠点に活動しているジュエリーデザイナー、アシュリー ツァン。

繊細なK14ゴールドのピースから高品質の大粒ダイヤモンドに至るまでさまざまなジュエリーデザインを手掛けている彼女は、アンティークジュエリーのコレクター兼ディーラーでもあり、オーダーメイドのブライダルピースにアンティークダイヤモンドを使用することもよくあるそう。

新作のモーニングジュエリーは、17世紀のジョージ王朝や19世紀のビクトリア女王時代の古典的な喪のスタイルに現代のデザインを取り入れていて、手持ちのジュエリーともしっくりとなじみます。

彼女がこのコレクションを作るきっかけとなったのは、今年の夏の父親の死。その悲しみと心痛に耐えている時、彼女はビクトリア朝時代のモーニングジュエリーに出会い、その美しさに魅了、それがこの新作のインスピレーションの一つとなったそう。「私は自分用に1つ、祖母用にも1つモーニングジュエリーを作りました。今回の父の死により祖母は、3人の息子のうち2人を失いました。このコレクションは私の父を偲ぶものですが、祖母のためのものでもあるのです」とアシュリーは語ります。

天国への梯子や幸福への回帰を象徴するスズランの花、つぼ、柳の木、葉をモチーフに、黒や白のエナメルにダイヤモンドやカラーストーンをセッティングしたネックレスやリング、イヤリングなどのアイテムが揃っていて、その多くはシンプルなデザインで日常づかいとしても楽しめます。また彼女の他のコレクション同様、作品に刻印を入れられるため、故人への自身の思いを刻んだパーソナルジュエリーにすることも可能です。

トップ画像:Ashley Zhang Jewelry(アシュリー ツァン ジュエリー)

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