BJI ブログ No.132

アメリカで開催される大規模なジュエリーショーとして知られるJCKラスベガス、今年は第30回を迎え6月10日～13日まで開催されました。多数の出展企業の中で目を引いたものの1つとして、Easy Emergency Contact（EZEC＝容易な緊急連絡）社のメディカルID（医療識別）ジュエリーが挙げられます。

メディカルIDジュエリーとは、世界標準の救急医療を示す*「スター・オブ・ライフ」が刻印され、1型糖尿病、アナフィラキシーなどの重要な病歴、リビング・ウィルや蘇生措置拒否などの伝えたいことが印字やQRコード化されたブレスレット、ネックレスなどのこと。言葉がしゃべれない状況でも、医療従事者に情報をスムーズに提供できるアイテムとして注目されています。

EZEC社は、「現在流通しているメディカルIDジュエリーは、実用的ではあるがデザインがイマイチでは？」という発想から2021年誕生したアメリカ・コロラド州デンバーに本拠を置くヘルスケアテクノロジー企業。JCKショーでは、そのテクノロジーが紹介されていました。

創業者は、2019年のジュエリーイベントで出会ったことがきっかけとなり、その後ビジネスパートナーとしていくつかのプロジェクトを手掛けてきたアンドリュー・デ マルコ(Andrew De Marco）とマノス・フォンドゥラキス（Manos Phoundoulakis）の2人。

2人ともジュエリー業界で長いキャリアがあり、アンドリューはかつて緊急医療を要するような交通事故に遭遇、マノスは1型糖尿病の患者であることから、EZECの創設の話はとんとん拍子で進んでいきました。

EZECは、ジュエリー業者がメディカルIDジュエリーを製作するにあたり、そこにNFC（近距離無線通信）マイクロチップを搭載するのですが、その基盤となる部分を担っています。そのマイクロチップは、HIPAA（ヒッパ-アメリカの医療情報の電子化の推進とそれに関係するプライバシー保護やセキュリティ確保について定めた法律）に準拠したモバイルアプリとデータベースに接続されます。

着用者が救急医療を必要とする場合、ファーストレスポンダー（応急処置を行う人）または介護者は、EZECを装備したジュエリーをスキャンすることで、着用者の医療情報にアクセスできます。さらに彼らは、その人の身元、病状、血液型、ワクチン情報、アレルギー、および処方された薬のリストを見たり、DNRや成年後見制度などにもアクセスすることができます。また、着用者の緊急連絡先に着用者の現況や場所などが自動的に通知し、連絡先をファーストレスポンダーや介護者に接続して、着用者の状態や治療に関する最新情報、その他の重要な情報を受け取ることもできるというすぐれもの。

アプリを持っていない可能性のある一般の人たちとは、プライバシーの観点から特定の情報のみ共有することも選択できます。

パンデミックなどのさまざまな困難な状況の中、ジュエリーデザイナーがEZECの技術をライセンス供与し、自分の店舗やEZECのオンラインマーケットで自身がデザインした作品を販売する機会が増えることによって、ジュエリー部門を元気にすることもまたEZECの目的の１つ。ジュエリーを大量生産するのではなく、メディカルIDを通してアメリカの国内外の職人のネットワークを構築することで、顧客のスタイルに合ったジュエリーデザインを提供し、職人には作品を展示や販売する場所を提供することを主眼としています。

「EZECを利用すれば、ジュエリー業者が売り上げを伸ばしながら顧客の生活を改善するのをサポートできます」とマノスは語ります。

日本では着用者の名前や血液型、アレルギーなどを印字したブレスレットやネックレスがネットなどの通販で販売、スマートフォンによるアプリもありますが、アメリカと比べるとまだまだなじみが薄いよう。地震や大雨など自然災害の多い昨今、日本もメディカルIDを利用することの必要性をしみじみと感じます。

一刻を争う緊急医療では、患者の状況や情報をできるだけ早く、できるだけ多く取得することで助かる命があります。それもお気に入りのジュエリーが自分の身を守ってくれるとなれば、なおうれしいですよね。日本でもこうしたジュエリーが、近いうちに登場してくれるといいですね。

TOP画像：National Jewelry HPより出典

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