エキゾティックジュエリーの系譜、カルティエ
カルティエに豪奢な輝きをもたらしたマハラジャとの出会い
Text=Takahashi Yoshiko / Watanabe Ikuko
インド風の装飾や宝飾品が初めてヨーロッパの知るところとなったのは、19世紀の世界博覧会の結果でした。1880年以来、イギリスとフランスではインド風ジュエリーが流行し始めます。1900年、カルティエも2粒のエメラルドを使ったインド風のリングを作製しています。
1911年はインドとカルティエにとって、記念すべき年です。この年、創業者であるルイ=フランソワ・カルティエの孫、ジャック・カルティエが初めてインドへと旅立ちました。ジャックはインドで「インド近代化の父」と呼ばれるバローダ藩王国のマハラジャ、サヤジ・ラオⅢ世に会います。大の宝石好きだった彼はジャックがサンプルとして持参したプラチナのジュエリーや小物を大変気に入り、彼が所有している宝石のコレクションすべてをプラチナで作り直すように命じたのです。ジャックのインドへの旅がきっかけのひとつとなり、インドの支配階級の人々はパリの宝飾デザインに興味を持ち、その後カルティエへのオーダーが続くことになります。その中で、特に注目すべきは、パティアラのマハラジャ、ブピンドラ・シンのために作り直された宝飾品です。この仕事は何年にもわたり、作業が終了した1928年、カルティエはパリで展示会を開催しています。この展示会は上流階級の人々の間で大きな話題となりました。
一方、この旅でカルティエもまた、インドから多くの刺激を受けます。1920年以後、カルティエはカシミールやしのモチーフを基本形として、エイグレットを制作し始めます。また、ターバンに飾りのタッセル「テューラ」や「バズ」と呼ばれる腕にはめるアームレットからもインスピレーションを得て、エキゾティックなジュエリーを制作します。インドのマハラジャ達は何連にも及ぶネックレスをつけていました。1920年代、これを真似て、色ビーズのソートワールと真珠のロングネックレスを何重にも巻いてカジュアルに装うのが流行しましたが、カルティエも多くのソートワールを制作しています。
インドの影響を受けたカルティエのジュエリーとして、今日「トゥッティ・フルッティ」と呼ばれるジュエリーも忘れてはなりません。1920年代から30年代にかけて、パリのカフェ・ソサエティの中心的人物の一人だったデイジー・フェロウズと当時カルティエのハイ・ジュエリー部門を統括していたジャンヌ・トゥーサンがこのジュエリーを誕生させました。デイジーはカルティエで買い求めた色石のネックレスとブレスレットを優美なインド風のジュエリーに作り直してほしいとジャンヌに依頼しました。ジャンヌは豪奢で洗練と優美さを併せ持つインド風ネックレスを作るようにアトリエに指示し、誕生したのがプラチナの上にルビー、サファイア、エメラルドがまるで果実のように輝く「トゥッティ・フルッティ」だったのです。
ジャック・カルティエとインドとの出会い。それは、カルティエの歴史にまばゆいほど荘厳な輝きをもたらしたと言えるでしょう。
TOP画像/現代の「トゥッティ・フルッティ」リング。K18WG・サファイア・ルビー・エメラルド・ダイヤモンド。 下/イヤリング K18WG・サファイア・ルビー・エメラルド・ダイヤモンド。
Brand Jewelry より抜粋
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