クリスティーズのオークション「Magnificent Jewels（素晴らしい宝石）」は、その名の通り毎回素晴らしい宝石が出品され、毎回話題となります。

ユニークピースを集めたクリスティーズ「Magnificent Jewels」が6月17日、ニューヨークで開催されます。13日までにオンラインで登録すると入札が可能です。
https://www.christies.com/en/auction/magnificent-jewels-30761/

注目は、日本でも話題になっているマリー・アントワネットのピンクダイヤモンドリング。ピンクダイヤモンドは10.38カラットもあります。モディファイドカイト ブリリアントカットと呼ばれるひし形の凧のような形のカットです。マリー・アントワネットは1791年フランス革命の勃発によりパリから国外に逃亡を図ろうとした際、忠実な美容師に宝石を託しました。それらの宝石の多くは後に娘のマリー＝テレーズに渡りました。ピンクダイヤモンドはその宝石の1つです。

マリー＝テレーズはそれを姪のシャンボール公爵夫人マリー＝テレーズに遺贈し、後にバイエルン王妃マリー＝テレーズへと渡ります。王妃は遺言の中で、この宝石を「シャンボール伯母さんから譲られたピンクのソリティアダイヤモンド」と記しています。1996年に売却されるまで旧フランス王族の間で代々受け継がれていきました。

現在の所有者は、ジュエリーデザイナー、JAR（ジョエル・アーサー・ローゼンタール）に、このピンクダイヤモンドをセンターストーンにセットしたリングを作って欲しいと依頼しました。そして完成したのが、今回オークションに出品された王冠のようなリングです。

クリスティーズの国際ジュエリー責任者ラフル・カダキア氏によると、「この石はインドのゴルコンダ産と思われ、柔らかな色合いが幾重にも重なり、角度によって紫やピンクに変化します。そしてJARの手が王室ゆかりの輝きを失うことなく、傑作へと導きました」 と語っています。リングの推定落札価格は300万〜500万ドル（約4億3700万円～7億2800万円）です。

次にコレクターの視線を集めているのが、アメリカの投資家でアートコレクターのアン・ヘンドリックス・バスのジュエリーコレクション。合計26点、すべて初出品で、ヴァン クリーフ＆アーペル、カルティエ、ブルガリ、JARといった名門ブランドがずらり。美術館所蔵に値するほどのお値打ちものばかりです。特になかなか目にすることができないJARの作品が11点も含まれています。そのうちのいくつかはJARのカタログ本（これもなかなか入手困難の）2002年発刊の『JAR I』に掲載されています。

ムガールコレクションの動向も目が離せません。ムガール王室ゆかりの3点が出品されています。中でも彫刻を施したコロンビア産エメラルドネックレスは、一番大きいエメラルドは470カラットあり、逸品中の逸品といえます。そのエメラルドには、近代アフガニスタンの父と広く称されるドゥッラーニー帝国の創始者、アフマド・シャー・ドゥッラーニーの名が刻まれています。ドゥゥラーニ帝国は、1747年から1826年まで存在したイスラム国家です。

もう１つのエメラルドネックレスは、合計297カラットのエメラルドにパールやスピネル、ルビーがセッティングされています。エメラルドネックレスは2本ともそれぞれ、推定落札価格200万～300万ドル（約2億9千万～4億3千万円）です。

また2,000カラット以上のスピネルがあしらわれた3連の天然真珠のネックレスにも注目。スピネルにはムガール帝国の統治者の名前が刻まれています。これも1億〜2億円が推定落札価格。ムガールコレクションの収益は、慈善事業に寄付される予定になっています。

まさに美術館で見られるようなジュエリーばかりが一堂に会する「Magnificent Jewels」。どんな人たちが落札するか気になります。

画像出典 : christies.com

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