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あなたの知らないオークションの世界 1

Text : Harada Nobuyuki

原田 信之 株式会社ジュエリーアドバイザーアンドギャラリー 取締役社長  jaag.jp


 「縁がない世界!」「素人には無理!」「何か怖い!」どれもライブオークション(注1)に対する大方の反応。ネットオークションに慣れている若い人もライブオークションには二の足を踏む。
 オークションを理解するうえで大切なのはリザーブ価格だ。リザーブ価格は最低落札価格のことでその金額未満では落札できない金額である。本来オークションはノーリザーブであるべきだが、出品を促進するための保険として設定される。オークションでのリザーブ価格は宝石が持つ本来の価値が主な構成要素でさまざまな費用やマージンが加わる卸価格とは異なる。当然店頭価格の数分の一というものも出てくる。リザーブ価格は工賃やブランドの人気もほとんど考慮しない。ブランドや手の込んだ細工のものは人気があれば自然と競り上がるので市場にまかせるのがオークションだ。反対に人気がなければ思わぬ安値で落札されることもある。実績から人気の乏しいものやリザーブ価格が低すぎるものはいくらでも落札できるノーリザーブとして出品される。日本語では「成り行き」と表示されるので理解しやすい。
 ネットオークションとの一番の違いはリザーブ価格の設定を出品者ではなくオークション会社が行うことだ。リザーブ価格からどのくらいまでが適当なのかおおよその範囲を示す見積価格も表示される。専門家が真贋も含めて査定をするので、金額に安心感がある。見積価格の範囲内で落札できればもしかして高い買い物をしたのではといった猜疑心を持つこともない。もちろんオークションなので、どうしても落札したい人が2人以上いた場合は思いがけない金額まで跳ね上がることはたまに起きる。良い点としてはオークションで買ったものはほとんどのケースで再度オークションに出品できるので、飽きたら売ってしまおうと考えれば気楽にできる。販売手数料は必要だが、客観情勢に変化がなければリザーブ価格は変わらない。
 欧米ではオークションが生活に根付いている。例えばパリには公営のオークションHotel Drouot(オテル・ドルーオー)があり、家具、道具、雑貨等ほとんどすべてのアイテムが日々オークションにかけられる。フリーマーケット同様に買い物の一つの手段として気軽に利用されている。もちろんジュエリーもある。オークションの世界ではジュエリーは絵画に次いで人気だ。気軽につけられるものから資産性の高いものまでオークション会社の格に応じて品揃えされる。
 オークション会社は国際オークションとローカルオークションの大きく2つに分類される。国際オークションは世界の大都市で下見会(注2)やオークションを開催し世界中の富裕層が主な顧客だ。中でも200年以上の伝統のあるクリスティーズとサザビーズが有名だ。国際オークションは輸送費や関税等の費用がかかるので結果として高額品が多くなり価格帯は500万円以上がメインで落札上位は2億円以上と桁が違う。ローカルオークションは各国に複数のオークション会社があり国内で開催されるため費用の面では有利で手数料も国際オークションに比べれば低く設定されている。価格帯も数万円から数千万円と幅広い需要に応えている。

(注1) 会場で競る古典的なオークション。ネットオークションと区別するための呼称。
(注2)オークションの前に出品ジュエリーを実際に手に取って見る会。世界の主要都市を巡回。
 次回は国際オークション開催地における商品の特色等について解説します。

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