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No.148 ヤマザキマリさんの指輪に彫られた猟師の彫刻。古代ローマから伝わるインタリオの優れた技

BJI ブログ No.148

ジュエリーサイトを巡っていたら、漫画そして映画『テルマエ・ロマエ』のヒットでおなじみの漫画家ヤマザキマリさんの記事が目に留まりました。

そこには、深紅のメノウのリングの画像が! それは、ヤマザキさんが36歳のとき、14歳年下のイタリア人のご主人ベッピーノさんからプロポーズされた際に贈られた石をK24のゴールド枠でセッティングしたリングで、ヤマザキさんの愛用品の1つ。

婚約指輪の宝石はダイヤモンドというイメージが強いのですが、このメノウは紀元2世紀のものといわれ、まだ22歳の学生だったご主人が小遣いをはたいて購入したもので、猟師が彫刻されています。

当時シングルマザーだったヤマザキさんは、息子さんの名前が黒澤明監督の映画『デルス・ウザーラ』に出てくる猟師の名に由来した「デルス」という名前だったことから、『これを着けていればいつもデルスのことを思い出せる』という理由でこの宝石をチョイスしたというベッピーノさんの言葉に、彼との結婚を決意したとか。

ところで、宝石に施されている彫刻といえば「カメオ」がよく知られていますが、この指輪の宝石の彫刻は、「インタリオ」と呼ばれるもの。

カメオとインタリオの違いは、前者が素材となる貝や宝石に模様を浮き彫りするのに対し、後者は逆に沈み彫りという彫刻技術を施します。

インタリオは元々、印章(シール)と呼ばれる手紙などの封蝋(ふうろうー手紙を封印する蝋)のスタンプとして使用されていました。

欧米の歴史ドラマや映画の中で、貴族たちが手紙を書いて封筒のフタに封蝋を押し、使用人に渡して相手に届けさせるシーンがあります。封蝋のスタンプには差出人や家系を表すシンボルマークが使われ、日本でいう印鑑のような役割を果たしていました。

伝統的な印章としてのインタリオは中世から1900年前後まで使用されていましたが、手書きによる署名が一般的になったため、見かけなくなりました。そのせいかカメオに比べると、インタリオはちょっとマイナーなイメージがあります。

でも、バチカンのローマ法王がはめている指輪は、インタリオだって知ってました?

それは「漁師の指輪」と呼ばれ、聖書によると初代ローマ法王とされているペトロが最初は漁師だったため、「漁師」の彫刻が彫られたのだとか。

この指輪、法王が変わるごとにハンマーを使ってたたき割られ、新しい指輪が製作されます。これは、当時「漁夫の指輪」が、公式文書などの捺印に用いられ、文書が偽造されないようにするためだったようです。

指輪は法王のシンボルであり、現代でも所有者が亡くなるたびに指輪を破壊する儀式が行われ、新法王にはまた新たな漁師の指輪が作られます。

宗教的な儀式として脈々と受け継がれてきたものとはいえ、破壊してしまうなんてなんだかとても切ないですね。

それにしても、カメオやインタリオといった彫刻宝石の技術は、古代ギリシャ、古代ローマ時代から存在していたというのだから、びっくり!

ヤマザキさんの指輪の宝石もご主人に言わせれば「博物館レベルのもの」というのだから、そんな希少な婚約指輪を贈られるなんてうらやましい限りです。

Top画像出典:この指輪は実際の法王が着用したもので、現在はスイス国立博物館に所蔵されている。www.nytimes.com

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ネコのモチーフを施したリング。背景はメノウ。¥140,800オンラインショップはこちら。

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