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No.29 新種アフガニスタン産エメラルドに迫る!

BJI ブログ No.29

5月の誕生石、エメラルド。西暦紀元前3000年から1500年の間にエジプトのファラオによってすでに珍重され、クレオパトラも愛用していたというのは有名な話。

彼女は、エメラルドをジュエリーとして身に着けるだけではなく、粉末にしてアイシャドーとしても使用していました。自身の名を付けたエメラルド鉱山「クレオパトラ鉱山」を所有したことからも、彼女の「エメラルドへの愛」の深さがわかるもの。

1520年代に今のコロンビアでより高品質で大量のエメラルドが見つかるまでは、エジプトがエメラルドの主な産地として知られていました。

現在では、コロンビアを筆頭にザンビア、ブラジル、ジンバブエ、マダガスカル、パキスタン、インド、アフガニスタン、ロシアなどで産出されています。

そんな中で、2021年3月25日スイス、バーゼルにあるSSEF(スイス宝石学会)において、新しく発見されたアフガニスタン産の上質なエメラルドの研究について発表があり、その詳細が最新の『THE JOURNAL OF GEMMOLOGY』(Gem-A)に寄稿されました。問題のエメラルドは2017年ごろから市場に出回っており、コロンビア産と間違って表示されていたもので、実際、外観も性質も南アメリカ産にかなり近いものでした。

SSEFの調査チームは、アフガニスタンのパンジシール渓谷産の100以上もの、1ctから30ctsまでの範囲でエメラルドを分析、市場に出回っている他のものとアフガン産のエメラルドの違いを確かなものとするために、何百もの他の場所のエメラルドと比較、それにより56の要素においてコロンビア産のサンプルとは全く違うものであることがわかりました。

新しいアフガン産エメラルドは、とがった管のような液状の内包物があり、良質、平行に中空の管が通っており、コロンビア産に非常に似ていますが、コロンビア産に見られるハチの巣のようなパターンがないのが特徴です。

また鉄の濃度がコロンビア産に比べ濃く、ザンビアやブラジル、ロシア産に比べると薄いということが分かりました。こうした発見に対し、SSEFのディレクターのMichael Krzemnicki(マイケル クルゼムニキ)博士は、「この調査プロジェクトは、いかに宝石の分析を科学分野で継続して発展させていくかを示すものであり、この魅力的な新種のエメラルドの知識を、宝石研究ならびに宝石業界に提供するための最前線で働いていることを誇りに思う」と語っています。

いまだ反政府武装勢力、タリバンと治安部隊との戦闘が続くアフガニスタンですが、良質なエメラルドが産出されるという一面もあるということをこの記事によって知りました。

1日も早く平和な日が訪れてくれるのを願うばかりです。(C)

TOP画像:出典元 THE JOURNAL OF GEMMOLOGY, 37(5), 2021


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