9月の誕生石、サファイア。オークションで激しい競り合いになるのはカシミール産
Written by MACHIDA Akemi
コーンフラワー(矢車草)ブルーのカシミール産は入手不可能!? スリランカ産はハイジュエリーにも使用。注目は、孔雀の羽を思わせる青緑系のモンタナサファイア。
カラーストーンがコロナ禍のなか人気のようです。きれいな色を見て少しでも気持ちを明るくしたい、あるいはお守りのように身につけたいという人が多いのでしょう。数あるカラーストーンの中で、特に人気なのがルビー、サファイア、エメラルドです。三大貴石と呼ばれ、ダイヤモンドよりも古い歴史を持ち、王侯貴族に愛された輝きは時代を経ても変わらず人の心を惹きつけてやみません。
特にサファイアは深い青の凛とした輝きが魅力。産出量が年々減っており、その中でも大粒で上質な石は貴重です。9月の誕生石でもあるサファイアにはイエローやピンクなど様々な色が存在しますが、サファイアと言って思い浮かべる色は、やはりブルーの色。ルビーは産地にこだわって選ぶ人が多いようですが、サファイアも産地による色の違いがあるのでしょうか。
最高級の色合いと言われているのは、カシミール産のサファイアです。コーンフラワー(矢車草)ブルーと呼ばれ加熱処理を行わなくても美しいのですが、街のジュエリーショップで目にすることはできません。19世紀後半の数年間で採りつくされてしまい幻の宝石と言われています。希少なためオークションに出品されると激しい競り合いとなりますが、2021年5月にサザビーズオークションに出品されたのは、オークション史上最大級の55カラットのカシミール産サファイアで、約4億2000万円という価格で落札されました。
ミャンマーではカシミール産の次に評価が高く、美しくて大粒のサファイアが採れていましたが、今は産出が少なくほとんど採れないと言われています。最高品質はロイヤルブルーサファイアと呼ばれ、カシミール産同様、加熱処理をしなくてもきれいな色をしています。
スリランカは宝石の国。最大の都市コロンボから車で約3時間のところに位置するラトゥナプラは宝石の採掘地として知られ、サファイアの他にもアメシスト、トルマリン、ガーネット、トパーズなど多くの宝石が採れます。スリランカ産のサファイアは、大粒でしかも透明度が高くて少し紫がかった青色が特徴。最近では、ルイ・ヴィトンがスリランカ産の上質な19.70カラットという大粒のシュガーローフカットのサファイアをハイジュエリーに使用しています。スリランカではピンクとオレンジの中間の色の、パパラチアサファイアが産出されることでも有名です。
マダガスカル産のサファイアは、スリランカ産と似た紫がかったブルーが特徴です。マダガスカルはアフリカ大陸の南東に位置する自然豊かな島国で、宝石の採掘が盛んです。1998年に世界最大級のサファイア鉱床が見つかり、それをきっかけにマダガスカル産のサファイアが世界中に広まりました。高品質なものも見つかっていますが、ほとんどが加熱処理されます。
オーストラリアでサファイアが大量に採れたのは1960年代頃。当時、タイのバイヤーがサファイアを自分の国に持ち帰り、ジュエリーにして世界に広めました。採れるサファイアはグレーがかったものや、ブルーが濃すぎるために暗く見えるという石が多いため、ほとんどが加熱処理され、おもに大量生産されるジュエリーに使われているようです。
濃いブルーが美しいとされるサファイアですが、淡い色のアメリカ・モンタナ州で採れるサファイアは透明感があってきれいです。モンタナサファイアと呼ばれ、青の中に緑が混ざったような色が特徴です。孔雀の羽を思わせる多色性のあるモンタナサファイアは、日本人女性が好みそうな色で今後人気が出そうです。
サファイアのジュエリーに正統派のデザインが多いのは、石本来の美しさを最大限に引き出したいから。サファイアは昔は年配の人がつけるイメージがありましたが、今は年代関係なく人気があり、普段使いにぴったりの気軽につけられるデザインのものも増えています。サファイアのブルーは上品できちんとした誠実さもアピールできるので、ビジネスにはもちろん、カジュアルな日常のファッションにも取り入れてみてはいかがでしょうか。
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