捨てるものは何もない! 廃棄される素材を使った工芸展。アメリカ・ヒューストンで開催中
Written by Brand Jewelry
アートの世界にもSDGsが拡大。廃材から誕生する数々の美しい作品。
アメリカ・テキサス州ヒューストンといえば、宇宙開発でおなじみのNASAが思い浮かびますが、実は芸術と文化の街としても知られています。中心街には、19の博物館や美術館の建ち並ぶ「博物館地区」があり、そこにはヒューストン現代工芸センター(以下、HCCC)という加工製品や工芸品の歴史についての教育を進めるために設立された非営利の芸術団体があり、粘土や繊維、ガラス、金属、木の他、リサイクル品を利用した芸術作品を紹介する美術館としても知られています。
HCCCでは、2月5日~5月7日まで「NOTHING GOES TO WASTE(捨てるものは何もない)」展を開催。陶磁器の破片、カット紙、大理石の残骸などの廃棄物から生み出された作品に焦点を当てていて、アーティストたちが回収された材料からどんな刺激を受けたのか、またさまざまな産業過程やアートの工程が地球の生態系に与える影響についても考えさせられる展示となっています。
パンデミックなどの厳しい現実に直面しながら、様々なアーティストが通常は廃棄される素材を使って美しい作品を生み出しています。
ペーパーアーティストのLeigh Suggs(レイ サッグス)は、全国の個人から収集した何千ものセキュリティ封筒を使って、郵便キルトシリーズを製作しました。キルトという媒体を使い、折り畳まれて縫い合わされた紙は、郵便局員と彼らがアメリカの生活で果たす重要な役割に敬意を表しているものです。
パンデミック発生後、使い捨てアイテムの生産が増えたことに対して、Calder Kamin(カルダー カミン)は、プラスティック製の袋やナイフ、フォーク、スプーンなどのリサイクル素材からカラフルで楽しい動物を創り出しました。自然の適応性に触発されたKaminは、地球における様々な生物が困難な状況にも対処していけることを描くことで、消費習慣を減らし、自分たちが持っているものを利用することをアピールしています。シカの上に彩り豊かに背負わされたビニールの山は、廃棄物とともに生きる動物がリアルに表現されています。
多くの産業が大量の材料廃棄物を生み出すことは一般的に知られていますが、芸術作品を作るときに費やされるエネルギーや資源の量はあまり公然と議論されていません。陶芸家のJeff Forster(ジェフ フォースター)は、自身の陶芸教室の1学期にどれだけの廃棄物が発生するかを調べ、自分の作品に使われる資源を節約するために、残った粘土、スリップ、釉薬を集めて作品を創り上げています。
他にもChase Travaille(チェース トラヴァイエ)による、陶器のかけらを集めて作った花瓶も印象的です。
HCCCキュレーターで今回の展示のキュレーションも担当したKathryn Hall(キャスリンホール)は、「今まで以上に地球が健やかに永らえていくのを確かなものにするために、どのように素材を集め、使うのか、私たちは再評価する必要があります。工芸を通して、楽しさ、そして持続可能のため生産されたり修復される利点が賛美をもって表現されています。工芸の歴史において受け継がれてきた『再利用』について貢献しているこのアーティストたちを紹介できることを嬉しく思います。」とコメントしています。
4月30日土曜日午後3時から午後4時30分まで、特別ツアーも開催する予定。各アーティストが自身の作品においてスクラップや廃棄素材をどのように使うのか、素材を回収することでアートが作られる持続可能な戦略について学びます。
現在さまざまな分野で『世界共通の目標』とされているSDGs。アートの世界においても取り組みが進んでいます。
TOP画像:https://crafthouston.org/
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