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ダイヤモンド・ヒストリー Vol.2


特権階級からセレブ、そして一般の女性に

ヨーロッパの王侯貴族やインドのマハラジャの肖像画で必ず目にするもの、それはジュエリーです。ダイヤモンドがインドやブラジルで発見されると、マハラジャは寺院に奉納するとともに自身をダイヤモンドで飾り立てました。一方、ブラジルのダイヤモンドは、スペインやポルトガルなどのヨーロッパ人によってヨーロッパ大陸に持ち込まれ、王侯貴族の権威の象徴として愛用されるようになります。

その頃のダイヤモンドは、カット技術が未発達であったため、素朴なテーブルカットやローズカットが主流で、ラウンドブリリアントカットのような全方向に光を放つ輝きとは異なります。それでも、地球上で一番硬い宝石は、権力者を虜にしました。しかも産出量が少なく、今以上に希少価値が高かったので、なんとしてでも手に入れたかったことでしょう。

1780年代、フランス王朝ヴァロア家の血を引くというジャンヌ・ド・ラ・モット伯爵夫人が仕組み、マリー・アントワネットを巻き込んだ「首飾り事件」。映画にもなった歴史的詐欺事件なので、ご存知の方も多いでしょう。この事件の主役であるネックレスは現存しませんが、デザイン画が残っています。無数に連ねたラウンドのダイヤモンドが首回りばかりでなく、胸元まで垂れ下がり、さらにダイヤモンドで作られたタッセルが付いているというゴージャスなネックレスです。

ダイヤモンドが珍しかったこの時代に、ボリュームのあるネックレスを制作するのは、ダイヤモンドを集めるだけでも大変な労力を要したでしょう。もしこの宝石がダイヤモンドでなく、他の石だったとしたら、詐欺事件にはならなかったかもしれません。このネックレスは、フランス革命の争乱のなかで消えてしまい、現在も行方不明です。

セレブの着こなしがお手本

かつてファッションリーダーと呼ばれたのは、特権階級に属する女性たちでした。マリー・アントワネットのファッションはヨーロッパ全域に普及したとされ、19世紀イギリスのヴィクトリア女王の時代には、夫に先立たれ幼い子と喪に服していた女王の黒っぽいファッションが流行しました。現代でもイギリス王室のキャサリン妃は常に世界の女性たちにオシャレの話題を提供しています。

同時に注目されるのはアカデミー賞などで見ることのできるハリウッド・スターのジュエリー使いです。今でもハリウッド・セレブは憧れの存在ですが、1920年代後期から60年代にかけて「ハリウッド黄金期」と呼ばれたアメリカ映画界で活躍したスターはまさに雲の上の人でした。マレーネ・ディートリッヒ、グレタ・ガルボ、ヴィヴィアン・リー、エリザベス・テーラーなど莫大な富を得た女優たちはカルティエ、ヴァン クリーフ&アーペルといったブランドのハイジュエリーを、今のようなレンタルではなく実際に購入しました。なかでもファッションとジュエリーの着こなしが品良く、とりわけ日本で人気が高いのは女優からモナコ公妃に転身したグレース・ケリーです。1956年、モナコ公国レーニエ3世から贈られた婚約指輪は、プラチナに10.47カラットのエメラルドカットのダイヤモンドをセッティングしたカルティエ製でした。グレース・ケリーはハイクラスの出身でしたが、それでも一般人から一国の妃になったので、シンデレラ・ストーリーとして全世界の女性たちの羨望を一身に集めます。
 
ダイヤモンドジュエリーはセレブから徐々に一般階層に広がります。ダイヤモンドジュエリー普及の陰には、プラチナの存在があります。1819年ロシア・ウラル地方でプラチナ鉱山、1924年、南アフリカ・ヨハネスブルク近くで世界最大のプラチナ鉱床が発見されると、ジュエリーの製作にプラチナが採用されます。プラチナの薄く伸び、粘り強い性質は少量でもダイヤモンドを留められることができるため、宝石商はこの素材を使って繊細なデザインを生み出し、20世紀初頭、欧米ではダイヤモンドとプラチナの真っ白なジュエリーが大流行しました。「ティファニーセッティング」の登場も拍車となり、婚約指輪の普及に伴ってダイヤモンドジュエリーが少しずつ身近に感じられる時代に入ります。

左/マリー・アントワネットの肖像。 右/マレーネ・ディートリッヒ。


 

左/レーニエ3世とグレース公妃。(1961) 右/エリザベス・テイラー。(1954)

ダイヤモンド・ヒストリー Vol.3に続く

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