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世界No.1の品質、日本産の宝石サンゴを装う


珊瑚は、お土産などカジュアルなアクセサリーや小物に利用される造礁珊瑚と、高級品となる宝石珊瑚に分かれます。日本の高知の海で採られる宝石珊瑚は、高級宝飾品のための素材として世界で認知されていますが、日本ではあまり知られていません。日本でジュエリーといえば、誰もが真珠を思い浮かべ、その高い品質を誇りにしています。宝石珊瑚は、成長に時間がかかり量産ができないため、真珠以上に希少な素材。珊瑚自体が高級宝石そのものと言えます。ここでは宝石珊瑚の美しさをフィーチャーします。


明治時代、高知県で珊瑚漁が始まると、ヨーロッパの珊瑚職人はあまりの大きさに驚いた!
移ろいやすいからこそ美しく、トレンドが変わるからこそ購買力をそそるファッションと、永遠の輝きを放ち、変わらぬ価値を持ち続けるジュエリーは、一見対極にあるように見えますが、実はどちらも時代の流れの中で磨かれ、研ぎ澄まされた感性から生み出されるという点では、共通しています。

ちなみに、2012年7月のパリ・オートクチュール・コレクションの期間中には、パリのハイジュエラーの新作発表会も正式日程の中に組み込まれ、ファッションとジュエリーの関係が、緊密度を増すことになっています。また今年は、創業時代からジュエリー部門を持つ「シャネル」や「ディオール」のほかに、「ルイ・ヴィトン」や「ヴェルサーチ」が、新しくジュエリー界に参入しました。

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日本の宝石といえば誰もが真っ先に思い浮かべるのは真珠です。しかし、真珠が登場したのは養殖真珠が成功した1893年(明治26年)です。それ以前、真珠は天然真珠なのであまりに小さく、宝石はサンゴやべっ甲が中心で、象牙、メノウや水晶などもありました。特に赤い珠のサンゴは女性の憧れでした。
 江戸文化の爛熟期、1804年(文化・文政期)以降、サンゴをあしらった髪飾りが流行します。当時日本ではまだサンゴを採取はされていなかったので、はるばる異国から持ち込まれた舶来品で、今でも博物館で当時の櫛を見ることができますが、象牙に桃色のサンゴや螺鈿、べっ甲の櫛に鮮やかな朱があしらわれ、まさに宝飾品です。江戸、明治、昭和と、女性たちは和装に合わせてサンゴの付いた櫛や帯留めをひとつくらいは必ず持つようになりました。

イタリアで見た高知県産の宝石珊瑚

『ブランドジュエリー』編集部では定期的に海外のジュエリー展示会の取材に行きます。イタリアの最大規模のジュエリーショー「ヴィチェンツァ・オロ」である時、意外な発見をしました。あまりにもきれいな赤、ピンクの光沢のきれいなサンゴを使ったセンスのいい高級品のジュエリーに目が止まり、その展示ブースを覗いてみると、「これはあなたの国、高知県のサンゴですよ。大きくて色も最高に美しい」。日本から来たことを告げると、販売の女性が説明してくれたのです。日本のサンゴはイタリアでモダンな形に研磨され、大ぶりのネックレスやリングに加工され、堂々とハイジュエリーのコーナーに並んでいました。

イタリアで見かけたサンゴのカジュアルなネックレス


欧米の女性はさまざまなタイプのジュエリーを身に着けますが、艶やかな色の血赤サンゴも好きなアイテムのひとつです。イタリアの宝石店のサンゴは、地中海サンゴが中心ですが、地中海サンゴは原木の枝が細く、内部にキズや白濁などの欠点を持っているものが多く、高級品にはほど遠い品質です。そうした理由もあって、高級なサンゴジュエリーには日本から輸入した宝石珊瑚が使われます。日本沿岸で採れる宝石珊瑚は、大きさ、品質ともに地中海産とは比較にならないほど良質なのです。とりわけ血赤サンゴとなるアカサンゴの原木は日本固有のものです。


 歴史をひもとくと、明治時代に高知県で珊瑚漁が始まると、噂で大きさや品質の良さを聞きつけたイタリア人をはじめ、ヨーロッパの珊瑚商人たちがこぞって買い付けに来ます。高知県が世界の宝石珊瑚産業の中心地になるまで時間はかかりませんでした。日本産の血赤サンゴを「トサ」と呼ぶようなったのもその頃からです。

左から 血赤サンゴ  モモイロサンゴ  シロサンゴ

宝石珊瑚と造礁珊瑚

地中海のサンゴ、日本のサンゴ、どのような違いがあるのでしょうか。


サンゴには海岸の浅瀬で見受けられる造礁珊瑚と、深海に生息する宝石珊瑚があります。造礁珊瑚は成長が早く軽石のような状態なので、研磨しても光沢は現れません。一方、宝石珊瑚と呼ばれるサンゴは丹念に磨くと美しい光沢が生まれます。きれいな色艶が現れるのは、サンゴの中心部に形成された原木と呼ばれる骨軸の部分です。


 地中海サンゴの原木は、水深50〜200mの海底に生息し、平均的な高さは20〜30cm、枝の広がりは10〜15cm、枝の直径は5〜6mm以下のものが中心です。細いので大きな珠を作ることはできず、ほとんどが小さなビーズになります。


日本の宝石珊瑚の中で特に高値で取引されるのは血赤サンゴです。日本近海、特に土佐湾の100〜300m程度の深海でゆっくりと成長します。平均的な高さは30cm、根元の直径が3cmと、これも大きくはありません。海底に扇のように枝を広げてくっついていて、そのまま採取したものは観賞用として人気です。大きなルースが採れるのは根元のごく一部なので、丸珠の場合、直径7mm以上は高価で、10mm以上を超えるものは希少です。色はこれ以上濃い赤はないほど濃い赤で艶があり、もちろん「フ」(年輪の中心にある白色)や「ヒ」(縦方向のひび)、またキズがないものです。


宝石珊瑚ではその他に最近人気のピンクサンゴがあります。ピンクサンゴは柔らかい色合いから「エンゼルスキン」「ボケ」と呼ばれてきました。ピンクサンゴは主にモモイロサンゴという原木から採取されます。モモイロサンゴは深海200〜500メートルに生息し、高さは1.5メートル、根元の直径が15センチとアカサンゴよりも大きく成長します。色はできるだけ均質で、色むらがないものを選ぶのがいいでしょう。


 近頃、白いサンゴも見るようになりましたが、真白なシロサンゴはレアです。シロサンゴは南シナ海、沖縄近海、五島列島、長崎沖、土佐湾など、日本近海の水深100〜400メートルのところに分布しています。だいたいピンク色を基調に白色が混ざり合う傾向があります。セピア色の色調も注目を集めています。


 宝石珊瑚はいずれも深いに海に生息するので、採取に費用がかかります。また枝の太さから考えてみても大きな珠が作れないことは容易に想像できます。


 宝石珊瑚は一生もののジュエリーです。女性のお守りとして、もちろん最近では赤、ピンク、白、セピアといろいろな色のサンゴをダイヤモンドや宝石と組み合わせて高感度なサンゴジュエリーが登場しているので、おしゃれとしても素敵です。サンゴは磨き直しができるので、長年使っていて、光沢がぼんやりしていたら、購入店や専門店に相談するとよいでしょう。


サンゴは真珠と同じように日本の宝石です。その柔らかな光沢は日本の女性の肌になじみ、身に着ける人の魅力を引き出してくれるでしょう。

Brand Jewelry 2013-2014 より抜粋

バラモチーフが可愛いサンゴのリング。アーム部分はウェーブ状で、あえて手作り感を表現しています。使用しているサンゴは「宝石サンゴ」という種類で、高知県の沖合の海を中心に採れます。高知県のサンゴは、世界一美しいと評価され、海外のハイブランドも採用しています。キメが細かく光沢があります。アームはシルバーです。シルバー専用の布地などでお手入れすれば黒ずみを防げます。サイズ直しは無料。オンラインショップはこちら。

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