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ジュエリーと、ジュエリーにまつわるさまざまなエピソード

No.133 JAR(ジャー)、20世紀が生んだ現代の天才ジュエラー、クリスティーズで推定額の3倍以上の高値で落札!

BJI ブログ No.133

2022年6月8日、ニューヨーク・クリスティーズのオークションにめったにお目にかかれないことで知られるジョエル・アーサー・ローゼンタール(Joel Arthur Rosenthal)、通称「JAR(ジャー)」のジュエリーが登場。オークション中に販売された12個の宝石の落札価格は、合計510万ドル(約6億8,218万2,986円)で クリスティーズが予測した150万ドルを大きく上回ったことが話題となっています。

JARといえば、1977年にパリ・ヴァンドーム広場に店を構え、1代でハイジュエリーの最高峰にまで昇りつめたジュエラー。オープン以来宣伝などは一切行わず、ショーウィンドウもない、完全予約制、選ばれし者のみが入店を許可されるというスタイルを貫き、大量生産で広く売っていく現代のビジネススタイルとは一線を画しています。

彼の作品の特徴は、何と言っても秀逸なパヴェセッティング。特に陰影をつけるために、宝石の色の濃淡を選び抜いた完璧なグラデーションには、画像を見ていても思わずため息がこぼれます。ゴールドやシルバーのほかにアルミ、チタン、本物の昆虫、木など、素材の価値というよりも、表現したいものに最も合う素材を使用しているというのも興味深い点です。

顧客は世界各国の王室をはじめ、マドンナ、グウィネス・パルトロウ、エレン・バーキンといったハリウッドスターたちが名を連ね「ルネ・ラリックの生まれ変わり」「現代のファベルジェ」と称えられる彼の美しいジュエリーは、オークションに出品されると必ず大きな話題になります。

今回のオークションに出品された作品は、2020年に亡くなった出版業、作家、インテリアデザイナー、慈善家のアン・ゲティ(夫はアメリカの石油王として知られるジャン・ポール・ゲティの4番目の息子ゴードン・ゲティ)所有のジュエリー。ゲティは長年JARコレクターとして知られ、ロンドンのサマセット・ハウスのJAR展示会(2013年)、サンフランシスコの「フランスの傑作ジュエリー」展(2007年)、ニューヨーク・メトロポリタン美術館のJAR回顧展(2013年)など、彼女のコレクションから展示会に作品が貸与されることもありました。

今回出品された作品は一部を除いたほとんどが、JARのキャリアの比較的早い時期である1980年代後半から1990年代半ばの間に制作されたもので、ゲティがデザイナーから直接購入したものです。

アイテムは、ブローチ9点、イヤリング3点。中でも特に注目されたのが、ルビー、サファイア、ガーネット、トルマリン、ダイヤモンドが華やかな「パーロット(オウム)咲きチューリップ」。見積では20万~30万ドル(2,700万~4,000万円)と推定されていましたが、最終的には83万1,600ドル(約1億951万円)で落札しました。

彼の作品のモチーフは蝶や植物が多いのですが、中には馬や羊といった動物もあり、今回のオークションでは、アゲートをメインに、目にサファイア、頭飾りに見事なダイヤモンドのパヴェセッティングが施されたシマウマのブローチが出品されていました。こちらも見積では5万~7万ドル(675万~945万円)と推定されていましたが、最終的にはその10倍以上の55万4,400ドル(約7,500万円)で落札されました。

オークションによる収益の一部は、ウクライナの救援基金に寄付されるそうです。

とても高価で手が届かないJARのジュエリーですが、彼の作品集なら入手できるものがあります。せめて作品集を眺めながら、優雅なひと時を過ごしたいものですね。作品集『Jewels by JAR (Metropolitan Museum of Art Series)』はアマゾンにて購入可能です。

TOP画像:CHRISTIE’S ウェブサイトより

合計0.5ctのダイヤモンドネックレス。直径約1.3cmのインパクトのあるサイズ。レースのような細工で軽やかな雰囲気です。¥143,000オンラインショップはこちら。

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