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ニューヨークで活躍した「カラー写真のパイオニア」、ソール・ライターの展覧会が、2023年7/8(土)~8/23(水)、東京・渋谷で開催

Written by Machida Akemi

『ハーパーズ・バザー』でのファッション写真も一挙公開。画家の眼を持つ写真家、ソール・ライターの色彩感覚に心奪われる。


誰でも簡単にスマートフォンで綺麗な写真が撮れる時代ですが、世界的に有名な写真家が撮影した写真には心が動かされるような魅力があります。

「ソール・ライターの原点 ニューヨークの色」が、2023年7月8日(土)~8月23日(水)まで、東京渋谷ヒカリエ9F ヒカリエホールで開催されます。

「カラー写真のパイオニア」と称されニューヨークで活躍した写真家、ソール・ライター。Bunkamura ザ・ミュージアムで行われた過去2回の展覧会は大きな反響を呼び、それを観てファンになったという人もいるでしょう。

第3弾となる本展はさらにスケールアップ。近年新たに発見された作品による大規模なカラースライド・プロジェクション、未公開モノクロ写真、絵画など400点以上の作品を通して、ソール・ライターの素顔と独特なカラーの世界観に迫ります。

ソール・ライターは、1950年代から『ハーパーズ・バザー』など多くのモード誌でカメラマンとして活躍しましたが、突然、50代で表舞台から姿を消します。その後は隠遁生活に入り、忘れ去られた存在となっていましたが、ソール・ライターが80代になった2006年、ドイツのシュタイデル社から出版された初の写真集『Early Color』により、再び脚光を浴びることになります。



カラー写真が軽視され、モノクロ写真のほうが芸術作品として主流だった時代に「色は人生における大切な要素」と言い、カラー写真を撮り続けたソール・ライター。誰も気に留めないような日常を、ガラス越しに眺めたり、建物の隙間から覗いたり、高い所から見下ろすように撮ったりといった大胆な構図にも目がいきます。

「私の好きな写真は何も写っていないように見えて、片隅で何か謎が起きている写真だ」と語り、雨や雪の日に撮られたものが多いのも特徴です。

ソール・ライターは、1923年にペンシルバニア州ピッツバーグで生まれます。父がユダヤ教のラビ(聖職者)で、将来ラビになることを期待されていましたが、1946年に画家を志し、父から逃れるようにニューヨークへ移住します。

その時代は、第二次世界大戦が終わってまだ間もない頃。それまで芸術の中心地はパリでしたが、戦後は戦禍を被ることがなかったニューヨークに多くの芸術家たちが集まりました。

なかでもイースト・ヴィレッジは、アーティストを志す若者が多く集う場所で、そこに住んでいたソール・ライターは仲間から写真の撮り方を教わりカメラに目覚めます。

左上から《無題(セロニアス・モンク)》 撮影年不詳/《ジョン・ケージと絵を見に来た際、 ストロボ・テストのためにポーズをとる ロバート・ラウシェンバーグ》撮影年不詳/中上《無題(ユージン・スミス)》 1950 年代/下《アンディ・ウォーホル》1952 年頃/右《マースとジョン(マース・カニングハムとジョン・ケージ)》 1952 年頃 すべてソール・ライター© Saul Leiter Foundation


本展では当時交流のあったアーティストたち、同じピッツバーグ出身のアンディ・ウォーホルや水俣病を世界に伝えた写真家ユージン・スミス、舞踊家のマース・カニングハム、ジャズ・ピアニストのセロニアス・モンクなど、後に巨匠と称される人たちのポートレートも紹介します。

生計を立てるためソール・ライターは商業写真を撮り始めますが、『ハーパーズ・バザー』誌のカメラマンとしてファッション写真を任されるようになると、のちにニューヨーク5番街に自分のスタジオを持つまでに成功します。

左『ハーパーズ・バザー』1958年10月号表紙(ソール・ライター撮影) ©Harper’s Bazaar/Hearst Magazine Media, Inc./ソール・ライター『ハーパーズ・バザー』1963 年 2 月号のための撮影カット © Saul Leiter Foundation

モデルを撮る時、準備が整った室内で撮影をするより、偶然何が起こるかわからないストリートでの撮影を好んだといいます。本展では、1950年~1960年代の『ハーパーズ・バザー』でのファッション写真も公開されます。

ヒカリエホールの大空間を利用した10面の大型スクリーンによる大規模プロジェクションも見逃せません。最新の作品群約250点を投影する迫力満点の展示で、ソール・ライターの色彩の世界が楽しめます。

「何もしないでいることには、ある種の気高さがある」と語り、名声や富に関心を示さなかったソール・ライター。2013年、89歳でこの世を去りましたが、その時点で彼の自宅アパートには膨大なスライドが、ほとんど未整理のまま埋もれるように積み重なっていたといいます。

カラー作品だけで数万点に上るといい、2014年に創設されたソール・ライター財団によって整理作業が行われていますが、業績の全貌が明かされるまでには、さらに数十年の歳月が必要とも言われています。

はっとするような発見があったり、いい刺激になりそうなソール・ライターの写真展。お気に入りの1枚を見つけてみてはいかがでしょうか。


ソール・ライターの原点 ニューヨークの色

会期 : 2023年7月8日(土)~8月23日(水)

※休館日なし

会場 : ヒカリエホール ホールA(渋谷ヒカリエ9F)

開場時間 : 11:00~20:00(最終入場は19:30まで)

入館料: 当日 一般1,800円 大学・高校生1,000円 中学生・小学生700円

※未就学児は入場無料

料金等の詳細は公式ホームページでご確認ください。   
https://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/23_saulleiter.html

お問い合わせ TEL 050-5541-8600(ハローダイヤル)

TOP画像:左上から《無題(セロニアス・モンク)》 撮影年不詳/《無題》撮影年不詳ともにソール・ライター © Saul Leiter Foundation/中央《ライトボックスを見るソール・ライター》2013 年 © Margit Erb/右2点《無題》撮影年不詳 ソール・ライター © Saul Leiter Foundation

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