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ジュエリーと、ジュエリーにまつわるさまざまなエピソード

NO.272 「デリー・パープル サファイア」と呼ばれた呪いのアメシスト

Text=Brand Jewelry

鑑別の方法が未熟であった時代、宝石はほぼ色で判断され、間違った種類で有名になった宝石が数々あります。呪われた宝石「デリー・パープルサファイア」もその1つ。実はアメシスト でした。

2月の誕生石と言えば、アメシスト。和名は紫水晶と呼ばれ、日本でも産出されるなじみのある宝石です。その歴史は古く、2万5000年前の遺跡から装身具が発見されています。

古代ギリシャ語「amethystos(アメシストス(酔っていない)」から名付けられ、中毒を防ぐと信じられていたとか。また、バレンタインデーで知られる愛の守護聖人、聖バレンタインは、キューピッドの像が刻まれたアメシストの指輪を身に着けていたと言われています。

紫色の宝石種は数が少なく、19世紀ブラジルで大きな鉱床が発見されるまでは、ルビーやエメラルドとともに高価な宝石として珍重されてきました。中には長い間サファイアと思われ、100年以上の歴史を紡いできたアメシストもあります。当サイトNo.229 の黒太子のルビーのようなものです。

その名は、デリー・パープルサファイア。元々はインド北部カンプールのヒンズー教寺院にあったものですが、1857年インドで起こった反乱の際に、イギリス軍のW.フェリス大佐が持ち去ったと言われています。近年判明しましたが、実はアメシストでした。

このアメシスト には多くの不幸な物語が語り継がれています。

W.フェリス大佐がこのサファイア(アメシスト )を持ってイギリスに帰国すると、次々と財産を失う不運に見舞われ、彼の家族全員も深刻な病いに冒されてしまいます。そして大佐の息子が友人の1人にこの石を譲り渡すと、その友人が突然自殺してしまったことから、彼はこのサファイアが不幸をもたらすものだと確信します。

1890年、宝石は科学者で作家のエドワード・ヘロン・アレンに贈られました。彼は「呪い」や「迷信」を信じるような人ではなかったのですが、間もなくそれが間違いだったことに気づきます。

彼や彼の周囲で起こった一連の不幸は、このサファイアのせいではないのか。魔よけとして、宝石を蛇の形の銀のリングにはめこみ、その上下に蝶番をつけたペンダントにしました。

リングの周囲には12星座のシンボルが並び、蝶番の1つには、スカラベを表すアメシストのビーズが2つ、もう1つには丸いシルバーの中心にアルファベットのTが彫られたものをつけました。

魔よけが効いたのか、しばらくの間は落ち着いたようだったので、友人に貸したところその友人に不幸が襲います。失意のあまり宝石を運河に投げ込んだヘロン・アレン。これでやっと長年の呪いから解放されると思いました。

ところが数か月後、宝石は運河からしゅんせつ船によって引き上げられ、地元の宝石商に持ち込まれます。宝石商はすぐに、その宝石がヘロン・アレンの指輪に取り付けたものだと気づき、また彼の元に戻ってきてしまったのでした。

当時彼には生まれたばかりの娘がおり、彼女を「呪い」から守るため、サファイアを7重の箱の中に入れて銀行の金庫に保管、彼の死後まで開けないようにと指示します。

1944年にヘロン・アレンは他界。彼の娘は、保管されていた宝石を箱ごとロンドン自然史博物館に寄贈します。1972年若い学芸員が宝石の入った箱を引き出しから発見するまで、このサファイアは人々の記憶から忘れ去られていました。

箱を開くと、そこには宝石と彼の直筆の手紙が入っていました。手紙にはこの宝石を所有した人たちが経験した「不吉な物語」が連綿と綴られていました。その結びには「この箱を開けた者へ、私としてはこの宝石を海に捨てることをお勧めする」とありました。

まるでミステリーかホラー映画のようなエピソードの数々。

しかし一部では、ヘロン・アレンの手紙は彼の小説に注目を集める目的であったのではないかとも言われています。

一方で、2007年、学芸員がこの宝石を博物館へと運んでいた時、悪天候に見舞われたり、展示に関する会議に出席しようとするたびに体調が悪くなったなど、今でも「呪いの話題」が飛び交っているとか。

真相はともかくとして、デリー・パープル サファイアは、現在もロンドン自然史博物館の金庫室に保管され、たびたび一般公開されています。

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トップ画像出展:nationalgeographic.com


K18ゴールド枠にミル打ちを細かく施したピアス。裏側のファセットがアメシストの色と輝きに深みをもたせています。これほどきれいに輝くアメシストは珍しいでしょう。10mm x 14mmあり、ボリュームのあるジュエリーが好きな方におすすめです。
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