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ジュエリーと、ジュエリーにまつわるさまざまなエピソード

No.20 環境に優しいダイヤモンド、スカイダイヤモンド

BJI ブログ No.20

世界中で環境対策について様々な取り組みが進んでおり、ファッションの世界では毛皮からエコファー(フェイクファー)へと移る中、ジュエリーにおいては合成ダイヤモンドが「クリーンなダイヤモンド」として注目されています。

そんな中、昨年10~11月ごろからネットのメディアでも取り上げられているのが、「Diamonds from the atmosphere 大気中から作るダイヤモンド」。その名もSkydiamond(スカイダイヤモンド)。

空中でどうやってダイヤモンドを作るの? まさか空にダイヤモンド鉱山を作るわけではないでしょう? と当初頭の中は混乱。

合成ダイヤモンドを作る主な方法は、現在、高温高圧(HPHT)法と、化学気相蒸着(CVD)法の2つがあります。前者は、地中の深いところで非常に高い温度と圧力で炭素がダイヤモンドとして結晶化する現象を人工的に創り出す方法で、後者は高温で低圧の環境を作り出す真空の装置を利用、メタンガスなどの炭素を主成分とするガスを分解、種結晶となるダイヤモンドの結晶板に炭素原子を蒸着させ、結晶を少しずつ堆積させる方法です。後者の方法だと、一度の作業工程で結晶板を複数並べて蒸着できるため、量産が見込まれます。

スカイダイヤモンドは、後者の化学気相蒸着(CVD)法を使っており、同社の研究所ではダイヤモンドをつくるのに必要なメタンを空気中から取り出しています。また二酸化炭素から炭素を、雨から水素を取り出して使っています。製造過程のエネルギーはすべて風力と太陽光で行っていて、製造にはすべて自然のものを使っているということです。

なるほど、だから「大気中から作るダイヤモンド=スカイダイヤモンド」なんですね。

スカイダイヤモンドではこの脱炭素のプロセスを経て作ったダイヤモンドを、今後月に200カラット生産する予定だそう。

同社のCEO、デール ヴィンス氏は、クリーンエネルギーの起業家として、またイギリスで1995年創設された世界初のグリーン電力会社のCEOとしても知られています。ヴィーガンでもある彼は世界初のヴィーガンのサッカーチーム、フォレストグリーンのクラブの会長も務めていますが、いままで宝石業界とは全く無縁。

天然ダイヤモンドの採掘自体に関する批判や、他の合成ダイヤモンドづくりにおいて化石燃料などが大量に使われているらしいと言われる中、業界のしがらみのないヴィンス氏が立ち上げた「脱炭素」によるスカイダイヤモンド、どうなっていくのでしょう。これにより、今後ますます合成ダイヤモンド製造の流れが加速することも考えられます。

天然ダイヤモンド=「自然の偶然によって作られた炭素の美しい結晶」というロマンチックなストーリーが刷り込まれている私、果たしてスカイダイヤモンドをはじめとした合成ダイヤモンドを「ダイヤモンド」として受け入れられることができるのか、環境問題とのはざまで悩みそうです。(C)


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