BJI ブログ

ジュエリーと、ジュエリーにまつわるさまざまなエピソード

No.160 最近気になるエナメルジュエリー。技法や移り変わりを探る

BJI ブログ No.160

カラーストーンとはまた一味違う、鮮やかな色合いが魅力のエナメルジュエリー。

代表的なものと言えば、1885年から1916年の期間当時のロシア皇帝のためにファベルジェが製作したイースターエッグやアール・ヌヴォー時代のルネ・ラリックの作品を思い浮かべます。エナメルは、ガラス質のエナメルを金属に融合させ、800~1000度という高温の炉内で約2~4分間ほど焼き上げ、「着色」する「ホットエナメル」という装飾技術が一般的です。

その歴史は古く、古代エジプトやギリシャまでさかのぼることができます。

エナメルの加熱温度は、窯内の750~850度に保ち、何度も行うので作業は手間がかかり、細心の注意力が必要とされます。ガラス粉末の厚さ、焼成温度、窯に入れている時間の長さが、成功するか失敗に終わるかを決める重要な要素となります。

技法もさまざま開発され、代表的なものには金属線で縁取りした中にエナメルを施すクロワゾネ(CLOISONNE-日本で有線七宝と呼ばれる)、アール・ヌーヴォー期に見られるステンドグラスのような風合いが魅力のプリカジュール(PLIQUE-A-JOUR)、金属を彫り込みそこにエナメルを施すシャンルヴェ(CHAMPLEVE)、純金でできた立体像の表面全体にエナメルを施すロンドボス(RONDE BOSSE)などがあります。

製作にかなりの手間を要するエナメルジュエリー、今日ではごく少数のアーティストによって継承されています。たとえば、ロシア連邦地域のタタールスタン共和国出身のIlgiz Fazulzyanov(イルギーズ・ファズルジアノフ、通称イルギーズ F)。自然をモチーフに彼の得意とするシャンルヴェ技法を駆使した作品は、まさに芸術。パリにショールームがあり、欧米では認知度が高いデザイナーです。2016年にはモスクワのクレムリン美術館で回顧展が開催しています。

イギリスのAlice Cicolini(アリス・チコリーニ)による、インドの伝統的なエナメル技法であるミーナカリを採用したジュエリーにも注目です。 門外不出とされているテクニックは、彼女のエナメルの師匠Kamal Meenakar(カマル・ミーナカール)から修得したもの。ビッグサイズのカラーストーンに合わせたエナメルの絶妙な色使いが魅力です。日本でも、数店舗のセレクトショップで取り扱いがあるようです。

ところで近年では、「ホットエナメル」に対し、「コールドエナメル」と呼ばれる「漆塗り」の技法が採用されることが多くなりました。

ホットエナメルのような美しい虹色や色合いの深さを再現することは難しいですが、樹脂を塗ってから低温(摂氏150度)で焼成して固めます。高温度で何度も焼いたり、窯に始終注意を払っている必要がないことから、ビギナーでも挑戦することが可能です。

揮発性が低く時間がかかるのが難点ですが、チコリーニはインドのサリーをイメージしたサリーコレクションで、漆の魅力を引き出すことに成功しています。

この技法を使った作品としては、ブシュロンの2022年のハイジュエリーコレクションにおける「セルパン」(ヘビ)ブレスレット、ディオールのK18ゴールドのダイヤモンドとカラーラッカーのネックレス、レポシの「ベルベル」などのハイブランドのコレクションにも見られます。ファベルジェのような芸術的なエナメルジュエリーから、今新たなエナメルジュエリーが開花。今後さらにエナメルは進化していくのではないでしょうか。

アリス・チコリーニの公式サイトによると、2022年3月8日から 2023年3月7日まで彼女の通販サイトで販売しているすべての作品の純利益の5%のうち、それぞれ半分ずつを、暴力の危険にさらされている女性とその子供たちのためを支援する Refuge と Women for Womenというロンドンの慈善団体のサポートに使われるということです。


TOP画像出典:Ilgiz Fazulzyanov/thejewelleryeditor.com 

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